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キャラお借りしてます、シリネロ。
キャラ崩壊・捏造、性描写有注意。





 初めて彼女に伸ばした掌に、明確な意味があったとは思わない。
 深い理由も衝動も原因も理屈もそこには存在せず、ただ導かれるようにその手を差し出した。
 それが彼女にとって大きな意味を持つということにすら気付けずに。

 だからこそ、救いを求めて伸ばされた掌を突き放した事実は今でもこの心を蝕んでいる。

 最初に目に入ってきたのは見慣れない灰色の天井だった。
 見たこともない色に疑問を抱き、身体を起こそうとしたネロは、それが叶わなくてベッドに身を沈めた。背中を受け止める柔らかな感触と、手首に食い込む不快な硬さ。
 そこで初めて自分の置かれている環境に気が付いた。狭く薄暗い部屋の扉は閉ざされ、殺風景なそこを埋め尽くすように置かれた鉄パイプの味気ないベッド。閉められたカーテンの隙間から差し込む仄かな光が、暗い視界にやたら眩しい。
 そしてネロ本人はというと、両腕を頭の上に持っていかされた形で拘束されていた。両手首に手錠を嵌められており、鎖が鉄パイプをまたいでいるが故にベッドから起き上がることもできない。仰向けの状態からうつ伏せになることはできるかもしれないが、そうする意味はどこにもなかった。
「……なン、だァ……? ッ、いっ」
 状況が掴めず、疑問の声を漏らしたネロの後頭部に鈍痛が走る。覚醒していく意識と引き換えに痛み始めた後頭部、その原因が何なのか頭を回転させようとするものの、時折襲い来る痛みそれ自体がネロの思考を途切れ途切れに遮った。
 思考は上手く纏まらず、身体を動かそうにも身じろぎ程度しか許されない。どうにもならぬ行き止まりを前にして、ネロにできたのはただもどかしさを味わうことだけだった。
「っクソ、……なンだッてンだ」
 悪態をついたところで、聞く者は誰もいない。やや空しさを覚える一方、冷えた頭でこの改めて状況を整理しようとした。
 しかし、その思考は再び遮られることとなる。
「……ン、ァ?」
 ゆっくりと開けられた扉から、悠然と入ってきた人物によって。

 手錠でベッドに縫い止められた男の姿を見降ろして、シリアは口の端を歪めて笑った。
「っ、は……、いいザマね」
「な、お前――ッ!?」
 自分を認めた瞬間に見開かれた青が、驚愕に染まったのがいい気味だった。その色が薄れてから垣間見える、後悔や罪の意識のようなものにはいつも苛立たされるけれど。
 シリアは苛立ちをぶつけるようにして乱暴に扉を閉めると、狭い部屋の中でベッドへ、男へと寄った。拘束されて逃げられない、逃げようもない彼が自分を見る表情は相変わらずで、シリアは全てを壊してしまいたい衝動に駆られた。それを抑え込み、覆い隠すようにして笑ってみせる。
 そうして、勢いよくベッドの上の男に馬乗りになった。挑発的な視線と訝しげな視線が交差する。
「……おいお前、一体何して」
「アンタ知ってるでしょ? あたしが何の依頼を受けてるか、って」
「あ゛?」
 唐突な語り口に男はやや間の抜けた声を返した。シリアはネロの上で、彼の顔を覗きこみながら、呆れたように嘆息してみせる。の
「もうボケちゃったのかしら。あたし、あんたを殺せ、って依頼を受けてんのよ」
「いや、……そりゃァ、知ってッ、けど」
 今更だろ、と、問い返す彼の瞳には疑念が満ちている。
「だったら、さっさと殺しゃァいいだろ。な、ンでこンな、回りくどいこと、」
「ふふ」
 疑問を呈する男に対して、シリアは冷ややかな笑みを零した。覗きこんだ顔をさらに近づけようとすると唇を噛んで顔を逸らそうとする、それを手で封じ込めた。無理矢理にこちらを向かせると、紫の瞳と青の瞳がかち合う。
 告発者と贖罪者の視線が交わされる。
「あたし、アンタに個人的に恨みがあるのよ。アンタだってよーく分かってるでしょ、だから」
 視線を逸らすと、目の前の顔を両腕で抱え込むようにながら自らの身体をベッドへ、男の身体に乗りかかるようにして横たえる。

「――殺しちゃう前に、好き勝手させてもらうの」

 抱え込んだその耳元へと、まるで恋人にするように甘やかに囁いた。
「ッ! ――おま、え、……な、ッ……!? オイ、――ァ」
 動揺を見せる男の声を無視して、シリアは舌をその左耳に這わせた。唾液で付け根部分を浸してやると、濡れた舌でそのまま、耳裏をなぞるように舐め上げる。じっくりと丹念に、時折甘く食みながら形のよい耳を嬲る。
「〜〜〜ッ、お、い、何、しやが、ッ……!? っふ、……ッ、」
「逃げんじゃないわよ」
 思わず首を逸らして逃げようとした頭を、無理矢理引き戻す。どすを効かせた脅すような声を耳に注ぎこむと男の身体が強張った。これ幸いとさらに念入りに耳を責めてやると時折震える身体に低く抑えられた声、返される反応ひとつひとつがシリアには心地よかった。
 左耳につけられたピアスごと、耳朶を口に含んでやる。軽く歯を立てながらピアス穴を舌先でつつきピアスを転がす。抱え込んだ頭は逃がさない。何があっても、離してやらない。
「……ぷ、はぁ」
「ッ、はッ――ァ、あッ!?」
 耳から口を離したシリアは、最後に男の耳元に生温い息を流し込んでから彼の頭を解放し、改めてその顔を覗き込んだ。吹き込まれた吐息を堪えるように咽喉を逸らせた男の、酷く混乱した様子がおかしかった。見た目の印象や口の悪さからはかけ離れた、自分でも可哀想になるくらいの危うさを秘めた男だったけれど、こんなにも激しく動揺しているのは初めて見た。
 それだけ自分の行為が衝撃的だったからかと思うと、胸のすく思いがした。
「……ッ、オイ、止め、……ッ」
 制止など最初から聞こうはずもない。まして、呑み込まれた言葉など、存在しないのと同義だ。男の胸に手を伸ばし、ネクタイを解いてシャツの前を開けると、日に焼けておらず、それでいて適度に筋肉がついて均整のとれた胸元が露わになる。身を捩ってなんとか逃れようとする抵抗は、手錠で拘束された上に上から押しかかられている状態では全く以て瑣末なものだ。
 むしろ往生際の悪さを強調するだけの行為に過ぎず、シリアは憐憫の情すら抱きそうになる。
「なに? もうヘバっちゃったの? 情けないわね、男のクセに」
「ッ、ち、ちが――!」
 否定する声を無視し、シリアはその咽喉に噛みついた。歯を立てながら舌で撫で強く吸ってやったところで、ごくりと男の喉仏が上下したのが伝わった。それと同時に飲み込まれた吐息の音も。
 ゆっくりと時間をかけてその一点を責めたのち、口を離すとそこにくっきりと鮮やかな赤い刻印が浮かび上がった。そう簡単には消えそうにない鬱血の痕を指でなぞる。確かめるように、刻み込むように。
「ここは目立つし、なかなか隠せそうにないわね。どうする? マフラーでもする?」
「………ッ」
「あ、でもこれが終わったら死んじゃうんだもんね。無用の心配だったわ」
 意地悪く笑ってみせると、咽喉を伝って下の方、鎖骨へと辿り着く。普段服装を崩すことのない彼のそこはやたらに白く、同じように刻み込んだ所有印はより鮮烈なコントラストに映えていた。胸に咲き誇る紅い紅い花――あたかも散ることのない花であるかのような錯覚を抱かせるような、確かな色。
 一つ一つ、刻み込むようにその花を咲かせていくシリアの耳に、呻くような男の声が届いた。
「……ろ、せよ……」
「?」
 十分に聞き取れなかったシリアは、思わず男の肌から口を離してその顔を注視した。力無く首を倒していた男は、シリアを見られないままに再び同じ言葉を紡ぐ。
「……殺せ」
「は?」
「殺せ、ッてンだよ」
 力無い、懇願のような言葉。堪えるように目を眇め、きつく眉を眇めながら、男は重ねてシリアに言った。
「……ンなことして何になる。俺が殺されりゃァそれでいいんだろォがよ、わざわざこンなことする必要なンざどこにも――」
「アンタ馬鹿?」
「……な、ッあ!? ッ、く、つッう……! ッ!」
 噛みつかれて濡れた鎖骨を指先で厭らしくなぞりながら、シリアは男を嘲った。指の腹で撫でたり爪先で弾いたり、強弱をつけて弄ぶ度に反応を返す身体がいっそ愛しい。あくまで愛しいと思えるのは身体だけで、この男ではないけれど。
 そうして一頻楽しんだ後、シリアは男の顔に自らの顔を寄せた。自らの絶対的優位を示すような、毒々しい笑みを顔に貼りつかせ、先程したのと同じように耳へと囁く。
「一思いに殺してなんかやらない、っつってんのよ。さっき言ったじゃないの。モノ分かりが悪すぎるわよ」
 それとも、と男の頭を掴んでこちらを向かせる。横を向いた顔が向かい合わせにお互いを見る、その色は酷く異なっていた。
「女に犯されるくらいなら死んだ方がマシ、とでも言うの?」
 随分とウブな坊ちゃんなのね、と挑発に近い軽侮の言葉を、しかし男は否定した。
「……違、ェよ」
「――何?」
 思わぬ否定を受け、シリアの眉が不快に跳ねた。掠れ掠れの、しかしハッタリとも思えないその否定の意味を量りかね、シリアは思わず口を止める。
「……ッ、お前が、俺を恨むのは当り前、だけど――そのために、お前が、わざわざこンな風に、自分を犠牲にする必要なンてな、どこにもねェだろォがよ……!」
「―――っ!?」
 男の初めてのまともな反撃は、シリアの心をもろに撃ち抜いた。
 反駁の言葉を失い息すら止めてしまった彼女に、男は追い打ちのような言葉をかける。

「――もっと、自分を大切にしろっつってンだよ! 俺が憎いんならどうとでもしろ、……でもなァ、大切な身体、俺なンかへの復讐のために汚すンじゃ――」

「うるさいっ!」
「………ッ」
 耳元で怒鳴り返され、男の叫びが止まる。けれど男が息を呑んだのはその声に圧倒されたからでなく、
 今にも泣きだしそうな、その顔を見てしまったからだった。
「うる、さいわよ……」
「………ッ、」
 絞り出すような声はがたがたに揺れて、酷く儚げで頼りない。シリアは震えそうな身体すら抑えて、男から顔を逸らして耳元へと口を寄せる。
「……ッおい、だから、やめろッつッて――ッ、ぐ!?」
 ぶちりと、男の耳で嫌な音がした。続いて走る激痛と、耳朶を浸す生温かい感触。
 シリアは男の耳朶から溢れる赤い液体を舐めとると身体を起こし、男から見える形で口の中に含んでいたものを吐き捨てた。唾液とともに、赤い血にまみれたものを、腹いせのように吐き捨てる。
 それは男が左耳につけていたピアスだった。
「……アンタ、馬鹿?」
 先程と同じ問いを、先程より余程力無い声で問う。
 真っ直ぐな視線に射竦められて、今度は男が黙る番だった。その紫色が、憎しみだけではない色に染まっていたから。憎しみや恨みや怨嗟だけでない、もっと他の――ぐちゃぐちゃの執着のような色に、染まっていたから。
「何が大切な身体よ。わざわざ自分を犠牲に、ですって? ――笑わせるわ」
 だから、男は声を発することができなかった。わずかな干渉で、彼女をを形作るバランスがばらばらに散らばり崩壊してしまうように思えたから。それが酷く、恐ろしかったから。
「馬鹿にしないでよ! あたしはずっとこの為に生きてきたんだから、それを無下にするのはやめて!」
 吐き出される言葉の一つ一つが彼女をずたずたに切り裂いているようで、酷く痛々しい。
「犠牲なんかじゃないの! あたしはアンタが全部だったから、全部アンタに復讐するために、生きて、それで……ッ」
「……シ、」
「呼ぶな!」
 シリアは肩を上下させていた。極度の興奮故に整わない呼吸、怒りで青ざめた白い顔。
 頬を流れ落ちる、透明な滴。
「あの時呼んでくれなかったくせに、あの時に呼んでくれればこんなことにならなかったのに! 今更アンタが、あたしの名前を呼ぶなッ!!」
 泣き喚く女性の姿が、あの日の少女の姿に重なった。
 今にも壊れそうな彼女の全てを、男は――ネロは、抱き締めたいと強く願った。
「……リ、ア……」
 けれど彼女の施した拘束が、抱き締めることを許さない。
「……だから、もう――いいのよ」
 諦めたように呟いた彼女の頬は、疲れきって儚げだった。
 その掌がネロの身体を這い――下方へと、腹部へと動かされる。
「ッ! やめ、ッ、お前、ッあ、馬鹿ヤロ……ッ」
 白い指がズボンの前を割り、さらに下着の中へと無遠慮に滑り込む。一連のやり取りでやや萎えていたそれは、しかし敏感な器官でもあり与えられた刺激に素直に反応した。肩掌で握り込まれ、もう一方の指先で竿を強く扱かれて少しずつ質量を増し、勃ち上がっていく。
「……ッ、くっあ、シリ……ッ」
「ねえ、あたしはさ」
 ネロが名前を呼ぼうとすると、彼女はそれを遮った。それは既に泣き声でしかなかったけれど、ネロを黙らせるのには十分すぎるほどの威力を持っていた。
 むしろ泣き声だったからこそ、ネロに対しては凶器と言えるほどのものと成り得たのだ。
「全部アンタに救われて、全部アンタに教わって、そうやって生きてきたけど」
 一心不乱に手を動かす彼女は、既にネロには背中を向けている。
「――アンタに教わってなくても、これぐらいできるのよ?」
 そう言うと、掌の中の昂ぶりを一気に頬張った。
「! オイ馬鹿、何し――ッ、離せ、止め、……は――ッあ、くそッ……!」
 先程散々耳を嬲られたときと同じように、舌先で陰茎を突かれ舐め上げられる。耳に施したときと同じ熟練度で、今はもっと感度の高いそこにだ。時折頬壁での刺激を加えられたり、喉奥で強く吸い付かれたりするたび、ネロの背中は粟立った。
 その様子に頓着することもなくひたすら口淫を続ける彼女の姿は、報復というよりかは、まるで奉仕しているかのようで。
 そんなことはしなくていいのだと、彼女を止める術をネロは持たなかった。
「……っふ、ほら……十分、できあがってんじゃないのよ」
 十分に反り立ったそれから口を離して、彼女は勝ち誇ったようにネロを振り向いた。
 勝ち誇ったような口調で、今にも崩れそうな泣き顔をしていた。
「最、悪の――悪夢を、見せたげるわよ。ねえ――最悪でしょ? 本当に、心底」
「やめッ――馬鹿、シリア、コレ外せ! いい加減に、ッ」
 目が合った。それだけで、言葉が詰まる。
 途切れ途切れの口上を前に、ネロもまた決壊寸前だった。何故今彼女を抱きしめてやれないのか。何故今彼女を支えてやれないのか。
 この腕さえ自由になれば、少しでも力になれたかもしれないのに。
 手遅れでも今更でも、僅かばかりでも彼女を救い上げることができたかもしれないのに。
 彼女に必要なものは、こんな繋がりなどでは有り得ないのに。
 ネロの思いを無視して、彼女はショートパンツを脱ぎ捨てた。同様にショーツを脱ぎ捨てると、自らの秘部に手を伸ばす。
 卑猥な水音が低く響き、彼女は今までで一番の嘲笑を見せた。
「あたしも準備万端、ってか。――まったく、馬鹿げてるわね」
 ――それは、彼女自身を嘲け笑うものに他ならなかった。
「ッオイ、馬鹿、やめろ! 何度でも言ってやっから、いい加減、――ッ聞いてンのか!」
 動けないネロを前に、彼女は自らの媚裂を熱い剛直に宛がった。掌と膝で身体を支え、仰向けに自分を見るネロを見返す。
 そうして、硝子細工の笑顔を見せた。
「聞いてるわ――っ、よ!」
「―――ッ!」
 一気に腰を落とし、彼女は息を詰めてその身を震わせた。十分に濡れそぼっていた彼女のそこはあっさりとネロを受け入れ、待ちかねたように絡み吸い付く。
 彼女は奥深くまで怒脹を咥え込むと、力任せに腰を上下に動かした。技巧も何もない、ぐちゃぐちゃに掻き乱された彼女の、精一杯の動き。
「……ひ、あ……ぁん、ふ、ぅあ、や……っ!」
 動くたびに中を抉られる彼女が、抑え切れずに嬌声を漏らす。
 下から見上げた彼女の姿は酷く淫靡で、また同時に侵してはならない妙な清らかさを感じさせるほどのひたむきさに満ち溢れていた。
 彼女を見上げ、ネロは酷く暗く、抑えた声を漏らしていた。
「ッ……馬ッ、鹿、ヤロォ……」
 ――最早、その言葉が誰を指し示しているかも定かではなかったけれど。
「やぅ、ひ、いゃっ……――ねぇ、さっ、き……っ、あ! や、教わん、なくて……も、っ! これぐらい、でき、るって、言った、けどっ、あぁ!」
 激しい動きを繰り返しながら、彼女が口を開く。喘ぎに紛れたその言葉の、意味は彼女本人ですら諒解出来ているかどうか怪しいところだった。
「ッん、なん、……だ、よ……ッ!」
「あ――あ、あたし、っ、どうせならっあ、ひぅっ、う、……ア、アン、タにっ」
 がくがくと彼女の膝が震えて、耐えられなくなったのか前のめりに突っ伏した身体がネロに圧し掛かった。精一杯に伸ばされた腕が拘束されたままのネロを抱き込み、さらに深く繋ぎ込んだ。
 そうして彼女は、ネロの耳元でこう囁いた。
「――アンタにこういうこと、っ教わりたかった……わよ」
「―――ッ!?」
 負けた、と思った。
 ここまで来て、ここまで身体を重ねることを拒んできたのに、
 ――今この瞬間、自分からシリアを抱きたくなってしまった。
「――! っふ、あっ、やぁぁぁあぁっ……う……」
 ネロの欲望を受け止め、シリアは全身を震わせながらさらに強くネロを抱き締めた。その腕は細く、抱きしめ返してやりたいと、改めてそう思わせるほどに華奢な身体がネロを縋っていた。
 そのまま意識を失ってしまったシリアを見降ろして、ネロは今後に拘束を解いてもらえるかどうかについて考えを巡らせていた。
 力無く細い身体を、抱き留めて支えてやる腕が必要だった。
 万一のときのために、責任を取ってやれる身柄や甲斐性とかも、間違いなく。
「クソッタレ……」
 命が惜しいわけではなかった。彼女のためになら、いつでもいくらでも捨てられる命のはずだった。
 ――それなのに、彼女のために生きなければならないと思わされてしまうことになるとは何事だ。
「――一生面倒見なきゃなンなくなっちまっただろォが、こン畜生が」
 低く零した声は、相変わらず誰にも届くことなく霧散した。








































色々と勝手に捏造させていただきました。楽しかったですが正直申し訳ありませんでした。
もっと救いのない終わりになるかと思ったらネロさんが結構ちゃきちゃき割り切っていってしまってあるぇ。
実際はもっとぐるぐる迷いそうですよね、ちょっとそこらへん消化不良気味です。ちょっと直したい。

ずっと美しい影をBGMに書いてました。シリ→ネロソングです個人的、今更とかそういうあたりが。
他の作業も並行しつつ大体100再生ぐらいで書き上がりました。


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