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今回は注意書きが多いぞ……。

・性描写・性表現・性転換・キャラ崩壊・キャラ捏造注意。
・今のネロさんとフィアロウさんの状況があまりにも美味しすぎたばかりにさかなが暴走したパラレルです。
・パラレルです。
・パラレルったらパラレルです。
・ネロさんとフィアロウさんは生まれから女の子な女体化です。
・もうこの時点でパラレルです。
・まあわりと女の子なのは身体だけなんですけどね。
・つまりパラレルです。
・有り難いことにそれぞれの背後さんからは許可を頂いています。
・本当にありがとうございます。
・パラレルです。

それでもよろしければ続きから。


























「フィアロウさんっ! これちょっと、大変ですよフィアロウさん、フィアロウさんっ!」
 不意に聞こえてきたらんこのただならぬ声に、スマウグはその柳眉を寄せた。いつも騒々しく姦しい彼女であったが、今の騒がしさは切羽詰まったそれで、滅多に見せない不安に満ちた声音に心がざわつく。
 屋根の上に佇んでいた彼は、そのままいとも簡単に窓からその声の聞こえた部屋へと滑り込む。和室に並べられた布団の片方に、彼の主が横たわっているのが見えた。
「主、如何した」
「あ、ああぅ、フィアロウさん、フィアロウさんが……!」
 らんこが取り乱す様子を目の当たりにして、スマウグは表情をさらに厳しくした。すぐさまフィアロウが横たわる布団の傍に寄ると、ぐったりと目を伏せたフィアロウの様子が目に映る。
 特徴的な二房の髪の毛を揺らしながら、らんこは唇を噛んだ。
「フィアロウさん、すごい熱出てるんです! 起きてこないからおかしいなって、それで見てみたんですけど、熱出てるんです! すっごく熱いんです!」
「落ち着け」
 錯乱故にか、重複した説明をするらんこの肩を宥めるように軽く叩いたスマウグの目の前で、フィアロウは薄く目を開けた。苦しげな息を吐きながら、熱に上気した頬でそれでも笑ってみせる。
「……あー、悪いな、らんこ……と、スマウグ、か」
「フィアロウさん!」
「大丈夫か」
 気遣わしげに覗いてくる二つの顔が綺麗に並んでいるのがおかしかったのか、フィアロウはその笑いを苦笑へと変えた。
「大丈夫、だ。……ちょっと最近、根、詰めすぎた、……あー」
「フィ、フィアロウさん!?」
 襲い来た眩暈に目元を押さえたフィアロウを前に、らんこはその名を呼ぶ他できないほどにうろたえていた。
 常が底抜けに明るい彼女の狼狽ぶりも、苦しさを覆い隠さんとする主の努力も、スマウグの目には酷く痛々しい。
 痛々しいといえば、もう一人。
「らんこ、あんま……騒ぐな」
「で、でも、フィアロウさんがっ」
「まだ朝だろ、……ネロ、起きたら、困る」
 とある日にフィアロウが連れ帰ってきた、ばらばらの心を細い身体に無理矢理押し込めたような青年。
 元々夜型で朝に弱かったらしい彼女だが、精神の均衡を崩した現在はさらに生活リズムが乱れていた。とはいえネロが眠っているのは隣のリビングで、あまり騒がしくすれば起き出して来かねない。そういう不穏な空気には妙に敏感なところがある青年だった。
「ただでさえいっぱいいっぱい、なのによ、……あんま、心配かけたくねぇ」
 自らの不甲斐無さにか、悔しげな顔をしてフィアロウが言う。スマウグに言わせれば、フィアロウ自身もいっぱいいっぱいであることは間違いなかったが。
「……スマウグ」
「何だ」
 そのことを思うと自然渋い顔にならざるを得ないスマウグだったが、主の呼びかけには素直に応える。忠誠を誓う者として、それは当然のことだから。
「らんこ、連れてよ……医者、呼んで来てくれ。トキワまで、んでもって、らんこ落ち着かせて」
「お、落ち着いてますぅ!」
「落ち着いて……ないから、言ってん、だよ。ネロ、起こしたくない……って、だけじゃねぇの」
 途切れ途切れの吐息の合間の、懇願のようなフィアロウの声。
「……お前が動揺してんの、見せたくねぇから。あいつ、絶対、自分のこと――」
「フィアロウさっ――!」
 不意に白んだ意識に最後まで言い切ることが出来ずに首を倒し、枕に顔を埋めたフィアロウの言わんとすることはスマウグにもらんこにも読み取れた。共に過ごした期間は決して長くないが、居候の青年のそういう性質についてはよく分かっていた。
 故にらんこも、張り上げかけた声をぎりぎりで押し留めて唇を噛んだのだろう。握りしめた指の関節の白さが彼女の忍耐を示していた。
「……頼む」
 最後の一押しは、掠れ掠れの声だった。
「……御意。……行くぞ、らんこ」
「……は、はい、はい……分かりました、お医者さん、お医者さん呼んで、すぐ」
「それと、落ち着いたらだ。……いいから」
 拳を握り、落ち着かなくぱたぱたと床を踏み鳴らすらんこの肩に触れ、スマウグは宥めるように努めて優しい声を出してやる。
 細い肩に添わせた掌に思わず力が籠もりそうになるがギリギリで抑えると、彼女もまた縋るようにスマウグの腕を掴んだ。
 そのままスマウグはらんこを連れ立って家を出た。この騒ぎを耳に入れたくない同居人のため、なるべくらんこを静かにさせようと今から努めつつ。

 その選択の結果など、誰も想像することができなかった。

 らんことスマウグが出ていくのを聞き届け、穏やかな微睡みに身を任せていたフィアロウは、不意に家を揺らす振動を感じた。
 最初はネロが起き出してきたのかと思った。しかしそれにしては足音が荒々しく、また――人数が、多い。同様に、らんことスマウグが医者を連れて戻ってきたと解釈するのにも無理があった。
 それでも、一瞬胸を去来した嫌な予感にフィアロウが従うことが出来なかったのは、熱にその身体を侵されていたからだった。ここでその嫌な予感に従うことができたとして、それが何かの救いになったとも思えなかったが。
 乱暴に扉を開ける音、それと同時に聞こえたざわざわと喧しい声の数々、薄眼を開けたフィアロウが最初に目にしたのは、
 こちらを向く、黒光りする金属の銃口。
「――っな……!?」
「おっと、抵抗すんなよ?」
 咄嗟に身体を起こしかけたフィアロウを牽制しながら部屋に乗り込んできた男は、拳銃を持たない方の掌に小さな革袋を持っていた。
 抗議の声を上げかけたところに放り投げられたそれをフィアロウは思わず受け止め、同時に舞い上がった白い粉末を否応がなしに吸いこんでしまう。
(!? ……まさか、これ)
 その粉末の正体に思い当たった時には、既に。
 急速に襲い来た眠気に身体が落ちる。沈みゆく意識の中、最後まで案じた友の名を、
(……ネ、ロ)
 呼ぶ猶予すら、与えられることはなかった。



 再びフィアロウの目を醒ましたのは、絶え間なく響く水音に何かが軋むような音――それと、聞き覚えのある、くぐもった声。痛む頭を煩わしく思いながら、ぼんやりと目を開いたフィアロウの目に、手入れを定期的にはされていないのかあまり綺麗ではない木の床が映る。
 熱ではっきりしない意識の上、聴覚もまた一つ膜を張ったような現実感のなさに囚われていて、それらはまるで夢の中の出来事であるかのように響いた。
 それが夢ではなく現実だと気付いたのは、聞こえた声がよく聞き覚えのあるものだったから。
 そのことに気付いた瞬間、フィアロウはその身を起こしていた。自分がどういう状況に置かれているかだとか、自分自身の体調だとか、そんなものは彼女の頭からは吹っ飛んでいた。唯一残されたものは、ただ一人を案ずる思い。
 そのような思いを胸に抱えたフィアロウが見たものは、それこそ夢であって欲しいと願わざるを得ないような、
(……ネ、ロ……!?)
 しかし、紛れもない現実であった。
「ふッ、ぅ、あ……っ」
 薄汚い小屋の中、目に入ったのは男が三人と、良く知る友の、未だかつて見たことのなかった姿。
「ホラ、もっと頑張れよ? そんなんじゃいつまで経っても終わんねえぞ」
「は、あぁッ!? ……いァ、う、ンンッ……!」
 フィアロウの視界の中のネロは、男の上に跨り、途切れ途切れの声を漏らしていた。加えて背後から覆いかぶさられ、豊かな胸を荒々しく揉みしだかれる度に震える身体は、既に白濁に汚されつつあった。
 力無く項垂れた顔の、前髪に隠されてその表情までは窺い得ない。空気を求めて力無く開閉する唇の赤さばかりが目に焼き付く。
 その赤に、見惚れてしまったような、気がした。
「――ッ、ネロ!」
 引き攣れたような声で彼女の名を叫んで立ち上がり、ネロへと駆け出しながら掌を伸ばす。
 呼ばれて反射的に顔を上げたネロの、一杯に開かれた蒼い瞳の中に自分の姿が見えた。
「……ふぃ、あろ……ッ!?」
 必死に絞り出された、けれど酷く細い声。
 本来なら目覚めたことに気付かれていないうちに、もっと策を練るべきだったのかもしれない。この場からなんとか抜け出して助けを求めるとか、そうでなくても何か武器になるものを探すとか。
 けれど、唐突に見せつけられた光景に、フィアロウの頭は完全に沸騰してしまっていた。ひとつの重大な事実を見失ってしまうほどに。
「……!? うあッ」
 勢いのままに引き上げた身体の重さに、今更気付く。踏み出した足も思うように動かない。足を縺れさせてバランスを崩したフィアロウの痩身を支えたのは、ただ一人、ネロには触れていなかった男だった。
 太い腕でフィアロウの手首を掴み、そのまま胸に抱き込む。熱に侵された身体で、ろくに抵抗を許されないままにフィアロウは完全に抑え込まれた。
「……このヤロ、離、せ!」
「おーい、こいつ起きちまったぞー? 可哀想になぁ、全く」
 掴む腕を振り払おうにも、ろくに力の入らない身体ではとても叶わなかった。同時に、男の言う「可哀想」の意味が分からず心中首を傾げる。
 せめてと身を捩ってネロを向くと、二つの蒼い双眸が交差した。真っ直ぐにフィアロウを見るネロの瞳の奥に潜んでいたものは、
 何処までも深く、どうしようもないほどの昏い、絶望。
「ッ――あ、ぐっ!」
 その深さに、思わず息を呑む。しかしフィアロウには理由を問う暇すら与えられなかった。腕を引っ張られ、床に身体を叩きつけられる。痛みに折れ曲がる身体に覆い被さる黒い影。
「はっ、あ、や、やめ――ッ、そいつに、手ェ……っひ、あァッ!? ……ッ」
「ハイハイ、残念でしたー」
「起きちまったんだからもうアウトだっつーの。諦めろ」
 ネロが必死に上げた抗議は、唐突に襲い来た下からの突き上げで中断させられた。唇を噛んで声を堪える一方、目だけは怒りを込めて男らを睨みつける。
 その反抗すら、彼らは鼻先で笑い飛ばした。
「やめ、このっ――んだよ、ワケわかんねぇんだよ、何がアウトなん――ッ!」
 覆い被さってくる男に荒々しく投げたフィアロウの問い掛けもまた途中で途切れる。腹部に膝を喰い込ませ、体重をかけながら苦悶に歪む顔に自らの顔を寄せて残酷な事実を告げる。
「お前が起きなきゃ、全部上手く行ったってことだよ」
「っは……!?」
「取引してたんだよ」
 自分の名を叫ぶ途切れ途切れの声が、酷く遠く聞こえた。
 フィアロウの至近距離で、男の顔が喜悦に歪む。反吐が出そうなその表情で、畳みかけるように言葉を紡いだ。
「お前が起きる前に、あいつが――ネロ、つったか? 俺達全員を満足させられたら、そのまま解放するってことになってたんだがなぁ」
 息が、止まった。
 あの馬鹿はよりにもよって、なんて取引を。
 取引すら言えない、そんなものはただの無茶だ。
 呆然として彼女を探すが、視界一杯に立ち塞がる目の前の男に遮られ、一寸たりともその姿を捉えることはできなかった。その様子に、男が嗤う。
「ま、そういうことで――観念しろよ、っと」
「っ! ふッざけんな、馬鹿言って――っ、く、やめ、ろ……!」
 べろりと湿った舌で耳を舐め上げられ、無遠慮な接触に怖気がした。服の上から胸元を探る手つきもただただ乱暴なばかりで、総じてフィアロウは不快感に眉を寄せた。
 申し訳程度の効力しか持たないような抵抗をそれでも続けるフィアロウは、ネロの無謀を内心で罵りながら――それ以上に、自分自身を強く苛んでいた。
 守るつもりで、連れ帰ったのだった。
 優しさ故に過剰なまでに負担を背負い、それでも全てを受け止めるだけの覚悟を胸に、自分を庇う意図さえ含み。
 ――結果、耐え切れずに頽れた、強くも儚い存在を。
 もう戦わなくても良いのだと、肩肘を張る必要はないのだと。全てを任せて休んでいいのだと、彼女に代わり、彼女の抱えるあらゆるものを引き受けるつもりで。
 なのに。
「ッあ、く――ぅ、……っひぅ、んっ……!?」
「んあ? ……ああ、ここが弱いのか」
 タートルネックの首元をずり下げられ、耳に触れていた舌が唐突に首筋へと降りて舐め上げる。ぞくりと全身を粟立てるような未知の感覚。止めようもなく身が震えて、千々に乱れた思考に確かな何かを見失いそうになる。
 フィアロウの反応に気を良くした男が繰り返し同じところを責め立てる度、それが何かを探る余裕も何もかもを乱される。
 背筋を這い上がってくる寒気にも似た、けれど異常なまでに甘やかな感覚の名をフィアロウは知らなかった。震える心を押し込めるように、きつく喰いしばった奥歯がフィアロウにしか聞こえない音を低く鳴らした。
「……っふ、う……っ! く、んんっ」
 心も声も、十二分には抑え切れず鼻にかかったような吐息が耳を打つ。その熱さが発熱とは違うものを孕んでいることは間違いなかったが、フィアロウはそれを認められはしなかった。知識として頭にあっても、いざ自分に振りかかってみて――熱に揺れる意識の中、知識と実際の体験を重ね合わせられるだけの余裕を、完全に失ってしまっていた。
 圧倒的に拙過ぎる状況も手伝ってか、好奇心よりは恐怖心が勝つ。それでも逃げる術すら封じられ、好き勝手に身体を弄繰り回される度に震えるこの身体が耐えているものは。
 初めて他人から与えられる、快楽という名の甘い毒。
「んっ……い、やだ……ッ何、だこ、れ、……は、ぁっ、ぅ」
「……もしかしてお前アレか、初めて?」
「っ、知る、か! いいから、あいつ、放し――ッ!?」
「そうか、初モノかー。いいこと聞いた」
 もがく細い身体を質量で抑え込み、手元に握った小型のナイフでフィアロウの服を切り裂きながら、男は嬉しそうに、心底嬉しそうに笑った。恐ろしく邪悪な笑みだった。
 切り裂いた服の間から掌を差し込み、適度に膨らんだフィアロウの双丘を握り込んだ。先程よりかは優しく、なぞるような柔らかさを以て。時折指先で先端を抓りつつ、口先で、舌で、吐息で、首筋を絶え間なく犯し尽くす。
「っ、は――く、ぅあ、んっ、ふ……っ! や、あッ!」
 刻み込まれた複数の赤い印が、フィアロウの首に毒々しく浮かぶ。外気に晒された肌の艶めかしい色づきは否定しようがなく、自分の身体の芯に灯されたものが発熱によるものなのか、絶え間なく与えられる快感によるものなのか、フィアロウには判別がつかなかった。
 何もかも分からないまま、全身を浸す甘ったるい熱に浮かされる。
「ぁ、や、止めッ――そっ、ち、触ん……! ッ、ふぁっ」
「何言ってんだ。こっちはまだ全然楽しんでねーっつーの」
 裂かれた服の隙間に潜る掌が肌を辿り下へ降りて、やがてフィアロウのズボンの端を掴んだ。慌てて伸ばされたフィアロウの細い指もいとも容易く払われる。捩る身体を抑えられ、慣れた手つきでズボンの前を開けられたところで、零された呟きがフィアロウの耳を打った。
「……そうだな、全然楽しんでねえ」
「………っ」
 繰り返された言葉に不吉な胸騒ぎを感じたフィアロウは、手を離されると同時に響いた固い金属音を耳に捉えて身体を強張らせた。恐怖にもがく身体には逃げ道など用意されておらず、男の動きを凍りついた瞳で辿るばかりだ。
 万力のような力で左肩を抑え込まれて、苦悶に歪んだ口元を乱暴に掴まれてこじ開けられる。
 決して大きくはないその口元に、熱に苛まれた肌よりも熱い昂りが無理矢理に捩じ込まれた。
「――んッ、んん!? んぐ、うッ、……ッ!」
「おら、噛むなよ? お仲間のことが心配だったらよお」
 追い打ちのようにかけられた言葉に、仰向けのまま強引に口腔を犯されたフィアロウの蒼い瞳がさらに見開かれる。
 必死に男を睨みつけようにも万力のような力で頭を掴まれては視線の向く先すら自由にならなかった。
 そのまま頭を引き上げられると、必然的に生臭い質量が咽喉の奥深くを抉る。自分が口に含んでいるもの、今させられている行為を考えると吐きそうになるが、仰向けの状態ではそれも満足に出来はしない。
 何より、ごく軽く放たれた脅しの言葉が、鎖のようにフィアロウの心を縛っていた。
「あの女はあの女で、結構楽しませて貰ったしよお。お前が反抗するんなら殺しちまってもいいっつーか――」
 強引に頭を上下させて口淫を強いる、イラマチオにも似た行為。
 その傍ら、男は酷薄な笑みと共に、その拘束を強めていく。フィアロウの心を、抵抗する気力を、雁字搦めに封じていく。
「……健気に頑張ってたぜ? お前のために、よっ!」
「! ッ、んんん―――ッ!」
 駄目押しの一言と同時に、フィアロウの口の中に白濁が放たれる。喉奥まで突き込まれたそれが吐き出した粘ついた液体を、吐き出すこともできずに飲み下す。
 それを確認したところで、男は満足げにフィアロウの口を解放した。解放されるや否や、フィアロウはうつ伏せの体勢で何度も咳き込む。
 注ぎ込まれた液体の一部は既に食道を流れ胃を汚染していた。その事実と咽喉に引っかかる感覚にさらに嘔吐感が煽られる。咳き込むフィアロウの口元から垂れる、透明な涎と白濁が混じり合った液体が床を汚した。
 ひどく汚らしいそれが自分の口から吐き出されたものかと思うと怖気がして、床から目を逸らすようにフィアロウは顔を上げた。そこで初めて男の影から解放された視界の中、
 良く知る綺麗な、綺麗な蒼い瞳と目が合った。

「――フィアロウ!」
 少し前まで自分の身体を蹂躙していた男が今度は友に覆い被さる光景は、ネロにとっては悪夢に相違なかった。
 上がり切った息、肩で呼吸をしつつも張り上げた抗議は、既に悲鳴と形容するに相応しい響きで。
「ッやめ――やめろ! アイツに、は手ェ出すなって、代わりに俺が幾らでも……ッ!」
 引き攣れた悲鳴を、首元に喰い込んだ犬歯が遮る。甘噛みなどではない、明確に傷つける意図を以て突き立てられた牙は皮膚を喰い破り、赤い血潮を溢れさせる。
「――ッは、ァ……っ」
 完全に蕩かされつつあったネロの身体は、僅かな粘度を持ったそれが柔らかな肌を伝う感覚にすら反応してしまうほどだった。
 息を堪え、悔しげに唇を噛むネロを抱き込み、はち切れんばかりのその胸を嬲っていた男は、背後から囁くようにして耳打ちした。
 ネロにとっては、この上なく残酷な宣告を。
「だから、あの女も起きちまっただろ? つまりはもう駄目手遅れ、二人まとめて犯されろってこと」
「ッ、テメェら……ッあ、んんっ!? っふ、ぅあっ、や……!」
「そもそもあんな条件呑んでたのが信じらんねえよなー、必死で可愛かったけどよぉ」
 騎乗位から身を起こした男の動きに、繋がれた中を擦られてびくびくと震える。前に後ろに二人の男に挟まれ責められ、抗議する余裕は元より息を整える暇さえない。
 気まぐれに揺らされては身体を弄り回され、ネロは自分の身体が玩具のように弄ばれていることをひしひしと感じていた。そのことに気付いたところで力の入らぬ身体、反抗の手段は一つたりとも残されてはいない。自分一人でも逃げ出すことは出来ないし、
 ――フィアロウを連れてなど、尚更。
 自分の中に深く埋められた楔が、気まぐれに律動するのを感じた。中で触れる一つ一つの動きに、全身が沸騰するような激しい感覚を抱かされる。
「ん、く……ァ、あァ、ひ、ぃあ……っ、あ、あぁ!」
 守りきれると信じていた。
 否、自分を信じ込ませていた。
 自らの過去も出自も見失い、抱いていた感情の一つ一つすら信じられぬような状況に追い込まれた彼女を、今度こそ。
 信じ込ませていたというのも本当は間違いだ、信じなければならなかった。
 自分が引き起こした事態の、全てを背負い込むためにはそうするしかなかったから。
「っ、やっく、ぅ――ん、ふ、ぅあっ! ひっ、あ、や……っ」
 それなのに、膝を折った。
 守るはずだった彼女の負担になってしまった。
 ならば、せめてと。
「出すぞ! 有り難く受け止めろよ、この淫乱がよ?」
「ひ、やっ――あ、ぅあ、あぁ……ぁ……ッ!」
 もう何度目かも分からない、男の欲望を受け止めてネロの身体が弓なりに反れる。呼吸の仕方を忘れそうになるこの感覚には未だ慣れなかった。
「ン、は……ァ、ッ!?」
 そのまま勢いよく後ろから抱き上げられるとうつ伏せに地面へと引き倒される。身体を貫いていたものを乱暴に引き抜かれた際に生じた摩擦に一際大きく震えた身体、白に汚し尽くされた秘所に再びそそり立つ屹立が宛がわれる。
「ふぁっ――!」
「んだよ、がっついちまってさぁ」
「うっせーな。さっきまで突っ込んでたんだからいいだろお前、こっちも溜まってんだよ!」
 幾度となく男に蹂躙されたそこは、荒々しく拙い動作で突き込まれた肉竿をも受け入れ、包み込んだ。すぐさま男はネロの背中に覆い被さり、欲望に任せて腰を打ち付ける。
 通常なら痛みを感じるような乱暴さだった。しかし散々時間をかけて慣らされ、融かされきったネロの身体は、それすら快楽として受け止めてしまう。拳を強く握り締め、床に額を擦りつけるようにして耐える――それ以外に、ネロに出来ることはなかった。
「ッ、あ、ふ――ッ、く、ぅン、や……ッは、ァ、あぁ! うっ、あ、」
「お? オトモダチもそろそろ本番なんじゃねーの?」
「っは、―――ッ!?」
 蕩かされかけた意識が一気に覚醒する。示されるまま誘われるまま、彼女を求めて顔を上げれば、
 良く知る綺麗な、綺麗な蒼い瞳と目が合った。

「……ネ、――ッ!?」
 目の前の友の名を呼びかけたフィアロウの背中に、男は容赦なく襲いかかる。先ほど寛げたズボンを下着ごとずり下げると、直前までフィアロウの口を蹂躙していた剛直を彼女の秘裂と合わせた。
 充分に濡れそぼったそこは、しかし未だ閉ざされた、開かれたことのない砦であり――けれども既にそれも、風前の灯であった。
「んじゃ、処女頂きますよ、――フィアロウちゃん?」
「っ――ぁ、うあ、ぁ……っ!」
「止めろ! くッそ、フィアロ――っ、ふ、ぅあッ!?」
 配慮も何もそこには存在しなかった。
 男は自らの思うままにフィアロウの秘華を貫き、さながら掘削するように腰を押し進めていく。処女喪失の激痛に耐えるフィアロウは奥歯を噛み砕かんばかりで、全てを拒むかのように息を詰め、呼吸を閉ざしていた。
 ネロの制止の声をも、男は無常に掻き乱す。奇しくもフィアロウと同じ後背位、充分に慣らされた彼女の声は甲高く甘やかで、ネロはいっそ咽喉を潰してしまいたいとさえ思った。
 目の前に守りたい相手がいるのに。
 目の前に守らなければならない相手がいるのに。
 手を伸ばしても届かない、守れない、救うことができない。
 ――むしろ、自分の方こそが。
「……っ、ぅ、く……っ、ん、う、」
「ひァ、あ……っ、や、ぃう、ん、は……ッぁ」
 ただ禍々しい鏡合わせのように、弄ばれるお互いの姿を見るだけで。
 それはひどくこの上なく、自らの無力さを痛感させられる光景だった。
「んっぁ、は――っ、ん、んんっ、く、……!」
「ふ、ぅあ、ァ! や、ぁう、――ひ、ぃあッ!?」
 二人の身体を好き勝手に貪る抽送も徐々に勢いを増していき、それに従って彼女らの悲鳴も喘ぎも、高く大きなものへと変わっていく。
 どうしても抑え切れないそれを憎むのも、今更だった。
「あー、俺、そろそろフィニッシュかも」
「マジで? 俺もだわ」
「……まあアレか、お前とはもう穴兄弟になっちまったしな」
「縁起でもねーこと言うなよ。……いや、その通りなんだけど」
 頭越しに交わされる会話にも緊張感が無く、故に妙に現実感をを殺がれたような気分になった。
 それでも身体を震わすこの振動も、身体の中を抉られるこの感触も、夢や幻想では有り得ないのだ。
「ま、愉しかったぜ? フィアロウちゃん」
「後でまたよろしくな、ネロちゃん」
 酷薄に告げられたからかい文句と共に、胎奥へと精を注ぎ込まれる。
 否定できないほどの確かな熱さを中で感じながら、二人は意識を手放した。



「……ロ、ネロ!」
 呼ぶ声はよく知っている声だった。もう朝なのだろうか。居候の立場で大きなことは言えないけれど、彼らの朝は早すぎる気がする。自分が朝に弱いという事実は確かに否定できないが。
 自分を呼ぶ声はまだ聞こえていたけれど、朝だとか昼だとか関係なく、起きようという気力は湧いてこなかった。ひどく、身体が重い。体力を使い果たして疲れ切った身体をもっと休める必要がある、だから起きたくない。
 それにしてもどうしてこんなにベッドが固いのだろう。彼女の家のベッドは上等で、柔らかかったはずなのに。もしかして落ちてしまったのだろうか、だからこんなにも名前を呼んで、起こそうとして。
 でも、頭が温かいから、それだけで妙に幸せに思えるような気がする。
「――ネロ!」
 一際大きい呼び声に導かれるように目を開いた。
 こちらを覗き込むフィアロウの顔は酷く心配げで、そして、疲弊しきった、汚れた顔だった。
「……フィ……、……?」
 何故だろう、まともに声が出ない。それにどうして、どうしてフィアロウはそんなに疲れて、それに、服が切れていて。
 疑問に思って身を起こすと同時に、頭を支えてくれていた温かさがフィアロウの膝であったことに気付いた。
 ごぽり

 ――そして、一拍遅れて、蘇った、記憶が。

「――あ、ァ……ッ!?」
「ネロ! ネロ、落ち着け、ネロ!」
 確かに起き上がった、起き上がった筈なのに身体が、支えきれない身体をフィアロウが抱えて、でも、こんなの汚い。フィアロウが触れていいような、フィアロウには触らせられないような、隅々まで穢されて、
 なのに、振り払えない。
「ネロ、ごめん。ごめんな、ネロ」
 震える身体が、フィアロウの胸に抱き込まれる。服が切り裂かれた間から感じる直接的な人肌が温かくて、自分とは縁遠いはずのものなのに。
 それにどうして謝るのか。フィアロウが謝ることなどひとつもなくて、そう、むしろ謝るのは自分の方で、なのにどうしてフィアロウが、そんな必死な顔をして、なんでずっと謝ってるんだ。
「全部俺のせいだ。ごめ――」
 謝らなくていい、と、それすら言えないから。
 絡繰人形みたいに謝罪を紡ぐその唇を、唇で塞いだ。
「――……ネ、ロ……?」
 呆然とした瞳に、早くもその行為を後悔する。
 抱え込む腕を振り払おうともがくけれど、酷く衰弱した身体はこんな時も思い通りにはならなかった。早く離れなければと思った。どうしようもなくて、縋りたくなるのに、
 自分は、彼女を守れないから。
「ネロ」
 荷物になるくらいなら、傍にいられない。
 彼女の足を引っ張るくらいなら、どこかで野垂れ死んだ方がマシだ。
 そう思うのに、どうして離してくれないのか。
「ネロ」
 呼ぶな、呼ぶな、呼ぶな。
 そんな風に名前を呼ぶな。
 そう名前を呼ばれてしまうと、縋りたくなるから。
 縋ってはいけないのに、縋りたくなるから。

「ネロ、……逃げないで、くれ」

 響いた懇願に、思わず動きが止まった。
 フィアロウを見上げる。震えていたのは自分だけではなかった。
 縋るように自分を抱き締めるその身体もまた、小刻みに震えていた。
「頼むから、逃げないで――」
 言葉が、途切れた。自分から見えないようにと逸らされた顔が、それでもこの至近距離では丸見えだった。
 その頬に伝う涙も、隠し遂せる筈がなかった。

 一筋落ちて、止まった涙をどうすればいいか分からなくて舌先で拭う。
 それは涙のしょっぱい味と、少し苦い味がした。























なんだかとっても難産だったけど故に喜びもひとしおといいますか達成感ぱなかったです
自分で書いたものの解説を自分でする虚しい作業、なう。

・フィアロウさんがかけられたものなに?
ざーm あっいやそっちじゃなくて? そんなかけられてないし?
キノコの胞子です。ポケモン世界だしね。100パーセント寝ちゃうもの。

・苦い味ってなに?
ざーm

お前ザーメン言いたいだけちゃうんかと。
しかも大して解説するとこなかった。いやまあ突っ込まれればさかな出来る範囲で答えますよ。

とりあえず勝手にネロさん非処女で、フィアロウさん処女で、
処女にはフェラさせないとね! と無理矢理捩じ込んださかなでした。
ゆりきすも結構無理矢理だった件


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