GM:はーいそれでは
GM:シノビガミセッション「神様のヒマ潰し」最終夜、始めていきましょう。
GM:よろしくお願いします!
御厨 天音:よろしくお願いします!
噪天 迅:よろしくお願いしまーす!
御薗 荷座:よろしくお願いします
鴗白翔:よろしゃーす
GM:それでは
GM:準備はお済みですね。
GM:
GM:■エピローグ:御厨 天音
御厨 天音:——秋が、来た。
御厨 天音:山の木々が鮮やかに色づいている。
御厨 天音:ところで、大人の色といえば、紅葉みたいな赤を天音はイメージする。
御厨 天音:丁度時季でもあるわけで、鮮やかな赤い靴を履いて、彼女は駆けていく。
御厨 天音:「——あのね、今日は調理実習でおはぎを作ったのよ。洋菓子はよく作るけど、和菓子ってあんまり作ったことがないから勉強になったわ」
御厨 天音:「御薗も美味しいって言ってくれたの、おはぎ。でもね、相変わらず心配性で、あと仕事もし過ぎで心配なのよね」
御厨 天音:噪天が管理する、空山小屋の縁側にひとりで座って、いつかの時と同じように話している。
御厨 天音:そう。
御厨 天音:今日は、噪天 迅の月命日——正確には違うのだろうけど、天音はそう言って憚らない——である。
御厨 天音:「……今日はね、迅さんに報告があって」
御厨 天音:見る者は誰もいないが、ピンと居住いを直す。
御厨 天音:「春に、白翔と結婚するの。私が高校を卒業したらすぐに」
御厨 天音:あの旅行の後、話はとんとん拍子に進んだ。
御厨 天音:懸念や反対する声もあったが、それは一つずつ潰していって——こういう時、御薗は本当に優秀だと思う——しかし結局、祝いの声の方が多く届いたように天音は思っている。
御厨 天音:「結納は来月なんだ」
御厨 天音:「迅さんにも、来てもらいたかったなぁ」
御厨 天音:それは叶わない。
御厨 天音:子どもの、最後のわがままで、その未来はなくしてしまった。
御厨 天音:後悔はしていない。けれど、見てもらいたかったのも、間違いのない気持ちだ。
御厨 天音:「……白翔がね、私の子どもが欲しいんだって」
御厨 天音:「私、白翔がそう言ってくれるのが、嬉しいの」
御厨 天音:「ほんとに、本当に嬉しいんだ」
御厨 天音:自分が死ぬ時に、彼も、あるいは——と、思っていたが。
御厨 天音:彼のことを、甘く見積もってしまっていたらしい。その心配は、無さそうだ。
御厨 天音:それが堪らなく、嬉しかった。
御厨 天音:「……迅さんが、世界を守ってくれたお陰ね」
御厨 天音:「ありがとう」
御厨 天音:返事はない。けれど、天音は話すのをやめなかった。
御厨 天音:「迅さん、いつも白翔のこと心配してたけど……きっと、もう大丈夫よ。私だって、いるんだから」
御厨 天音:立ち上がる。そして、天音は振り返って、
御厨 天音:「だから、迅さんは安心して見守っていてね」
御厨 天音:そう言って、あの時と何も変わらず、笑った。
御厨 天音:
御厨 天音:鴗家と御厨家の結納。天音の卒業式。白翔と、天音の結婚式。
御厨 天音:月日はあっと言う間に流れていく。
御厨 天音:そんなある日のことだった。
御厨 天音:天音が御薗を、「話がある」と言って呼び出したのは。
御厨 天音:「ごめんね、忙しいのに」
御厨 天音:そう言って、テーブルを挟んで御薗の前に座る天音は、いつもより随分かしこまった様子だ。しかし、そわそわともしている。
御薗 荷座:「……時間は作ってきている。気にすることはない。 どうかしたか、天音」
御薗 荷座:天音がそわそわしていても、こちらは特段変わらない様子だ。いつもどおり。
御厨 天音:「そう? でもね、ちゃんと休む時間も作らなきゃダメよ。御薗はいっつも頑張ってるんだから」
御厨 天音:「えっと、それで……あのね? 実は……」
御厨 天音:「……ううん、御薗にこうやって、改まって言うのって、何だか恥ずかしいわ……」
御厨 天音:もじもじした後、きりりと。
御厨 天音:「できたの」
御厨 天音:一言である。
御薗 荷座:「……」
御薗 荷座:「……、……そうか」 沈黙が、少しだけ流れたかもしれない。
御厨 天音:真面目な顔である。紅茶(ノンカフェイン)を一口飲んだ。
御厨 天音:「そうなの」
御厨 天音:「間に合いそうで安心したわ」
御厨 天音:天音に残された時間は、あまり多くない。それは、目の前の彼も知っているはずのことだ。
御薗 荷座:「……おめでとう。……であれば、また色々と段取りが必要になるな。何かあれば、遠慮せずに言うといい。いつもどおりだろうが」 祝いの言葉を一言で済ませた。次の口は早速仕事になっている。
御厨 天音:「ありがとう。御薗にも祝ってもらえて嬉しいわ。私と白翔で何とかなるところはするつもりだけど、いざという時は頼っちゃうだろうから……その時は、よろしくね」
御厨 天音:祝いの言葉を聞けば、ぱあっと顔を綻ばせた。けれども、
御厨 天音:「……あのね、もう一つ聞いてほしい……ううん、お願いしたいことがあって」
御薗 荷座:「……?」 もうひとつ。思い当たることはいくつかあるが、絞り切れはしないので、天音の言葉を待った。
御厨 天音:ここからはまだ、はっきりと生命の鼓動を感じることはできないけれど、確かに在るそれを、腹の上からさする。
御厨 天音:「この子を、守ってくれないかしら」
御厨 天音:「もちろん、私と白翔の子だから、責任を持って育てるわ。そういうのじゃなくて……私の時みたいに」
御厨 天音:「家族で、師匠で居てくれたら、私、すごく嬉しいわ」
御薗 荷座:「……そうだな。私ももう、天音の面倒をみる必要もなくなったのだから、そう言われれば引き受けざるを得ないな」
御薗 荷座:「良いだろう。ただし、引き受けるからには私も遠慮はしない。たとえ、天音が親であってもな。鴗のは……どうだろうな。口を出すタイプには見えないが」
御厨 天音:「うん、そうして頂戴! 御薗にビシバシ鍛えられたお陰で、今の私があるんだから」誇らしげに胸を張る。
御厨 天音:「それはこれから話し合うつもりだけど……鴗家と御厨家の、良いとこ取りができるのが理想よね」強かである。
御薗 荷座:「……それは……なかなか難度の高い理想だな。いや、引き受けた以上は善処しよう。その子が何を選ぶかは、本人次第だが」 相手は自分たちを仇敵とみなしているし。
御厨 天音:「御薗なら上手くやってくれると思ってるけど……でも、それはそうね。最終的には……大人になる時には、その子の意思を尊重してあげたいな」
御厨 天音:自分は、そうしてもらった。だから、わがままを言う権利は残してあげたいと思う。
御薗 荷座:「そのようにしよう。……私とて、意のままにできるわけでもない。お前が一番良くわかっているだろう。 最後は、己自身だ」
御厨 天音:「そうよね。……ありがとう、御薗。今までずうっと、見守ってくれて」
御厨 天音:わがままを押し通した自分に、変わらず接してくれている彼には、本当に感謝が尽きない。
御厨 天音:だからこそ、これから生まれてくる生命も、守ってほしいと思えた。
御厨 天音:「これからも、よろしくね。お兄ちゃん」
御厨 天音:「……ふふ、今度は御薗おじちゃんって呼ばれるのかしらね!」
御薗 荷座:「……流石に、兄と呼ばれるような年齢はとっくに過ぎてしまったな。 では、茶を飲んだら戻るとするか。することも増えたようだからな」 そう言って、淹れられた茶をすする。
御厨 天音:「うん! これから、忙しくなるわ」
どどんとふ:「GM」がログインしました。
御薗 荷座:卓を囲んで穏やかに茶を飲む機会もどれほどあることか。それでも、先に託されてしまったのだから、帰ったら余計な物を片付けるところから始めなければ。
よくできる”妹”が育ってしまったことは、あながち悪いことでもなかった、などと思いながら、ティーカップを置いた。//
御厨 天音:
御厨 天音:——季節は巡る。命は繋がる。
御厨 天音:
御厨 天音:そして、
御厨 天音:また夏がやってくる。
御厨 天音:
御厨 天音:燦燦と降り注ぐ陽光。
御厨 天音:日の光を受けてきらきら輝く水滴は、その中に様々な色を移す。
御厨 天音:ここは御厨家の庭園。
御厨 天音:「ぱぱー」
御厨 天音:「あのおはな、なんてなまえ? あのね、あのしろいのと、ももいろの!」
御厨 天音:小さな子どもが抱き着くようにあなたの足元に駆け寄って、そして花を指さした。
鴗白翔:「……だから。俺はわかんねえって……ああ、色の話じゃないのね」
鴗白翔:「えーと……何だっけな。なんだったっけ」
鴗白翔:鴗白翔は目が悪い。それはそれとして、カッコつけのブリーチはやめた。
鴗白翔:「キンギョソウ」
鴗白翔:「……たぶん」
鴗白翔:花の自信はさっぱりない。どれも同じように見える。
鴗白翔:色がわからないなら形を見ればいいのよ、じゃないのだ。それ以前に目が悪いのだから。
鴗白翔:「……あとで辞書持ってくるか。な」
御厨 天音:「うーんとねぇ……キンギョソウはあっち」なぜそれは分かるのだ。的確に、隣のキンギョソウを指さした。
御厨 天音:「じしょ……うん。……なんだっけ、ぺ……ぺちゅ……?」
鴗白翔:「ペチュニアか」
御厨 天音:「それ!」
御厨 天音:「ぺちゅにあ!」
御厨 天音:にぱーっ。
鴗白翔:名前を覚えるのは簡単だ。育て方も同様に簡単だ。植えてから見分けがさっぱりつかないのが問題なのであって。
鴗白翔:「はいはい」よーしよし。
鴗白翔:錫杖は遺品だ。
御厨 天音:「ふふ」ぎゅーっと足元に抱き着く。
鴗白翔:何れこの娘に託すことになるだろう。然るべき時に。
鴗白翔:「白音」
御厨 白音:「なあに?」
鴗白翔:「そろそろ御薗……御薗おじちゃんが頭に角生やして来る時間だぞ」
鴗白翔:角が生えていたのは自分だ。折り取ったが、それで神の血が薄まるわけでもない。
鴗白翔:折った角は、一緒に棺に入れてもらった。
御厨 白音:「はっ……」
御厨 白音:「それは……たいへん……」
御厨 白音:「みそのおじちゃん、おこったらこわいもんね……」
御厨 白音:まあ実際、怒られたことはそんなにないのだが。彼のやさしさに子どもが気づくには、もう少し時間がかかりそうだ。
鴗白翔:「お花おしまいな。御薗おじちゃん来たら、お母さんところ一緒に行って、それから頑張ろ」
鴗白翔:多羅尾の“家庭科”というやつのレベルは恐ろしいな、としみじみ思った。天音の使っていた教科書を譲り受けて、そのまま料理の教則本として使っている。
鴗白翔:「……あ」
御厨 白音:「うんっ。おけいこおわったら、けーきたべるの」にこにこと、父の手を取ろうとして、
御厨 白音:「……ぱぱ?」上げた声に、首をかしげる。
鴗白翔:「ランドセル……」親がうるさいのだ。買うなら金を出すからさっさとしろと。孫に会いたいだけの方便だろうが!!知ってるぞ!!
鴗白翔:「いーや、別に大したことじゃねえよ」
御厨 白音:「らんどせる!」ぴょんっと飛び跳ねんばかりの勢い。
御厨 白音:「しょうがっこうね!」
鴗白翔:「そうだよ」殆ど使われなかった黒いランドセルが死蔵されている。
鴗白翔:——多分、それはそのままだ。
鴗白翔:「じいちゃんがうるせえんだ。白音に早くランドセル選ばせてやれって」
御厨 白音:「白音もはやくらんどせるほしい~」
御厨 白音:「おけいこよりらんどせるする~」
鴗白翔:「あ~大変だ!!御薗が来た!!」※別に来てない。
御厨 白音:「!!」
御厨 白音:「いかなきゃ!!」
御厨 白音:ぴゅーっと駆け出して、数歩、すぐに振り返り、
御厨 白音:「ぱぱもはやく~!」手を差し出している。
御厨 白音:ちかりと陽に輝いたのは、桜貝が飾られたブレスレット。夏の旅行の時に、白音が欲しいと言ったもの。
鴗白翔:「焦んな焦んな。あいつどうせ時間の5分前ぴったりに来るから」
鴗白翔:歩くたびに錫杖が鳴る。
鴗白翔:それが、それだけが。
鴗白翔:今、ここに家族三人でいる証なのだ。
鴗白翔:小さな手を取る。
御厨 白音:「ぱぱ、いこ!」
御厨 白音:小さな、小さな手は、確かに父の手を取って、
御厨 白音:母の遺した錫杖の音とともに、その歩を進めていく。
鴗白翔:規則的な音。確かな小さな手。
鴗白翔:それがずっと大きくなって、あの日のあの姿のようになるまでは。
鴗白翔:死んでたまるか。
鴗白翔:——それが人と証明された者の、することだ。
GM:
GM:これにて
どどんとふ:「噪天 迅」がログインしました。
GM:シノビガミセッション「神様のヒマ潰し」終了と相成ります。
GM:ありがとうございました!!
噪天 迅:ありがとうございました~~!!いいセッションだった……!
御厨 白音:ありがとうございました!楽しくやらせていただきました。感謝。
鴗白翔:ありがとうございました~~~~~~~~
御薗 荷座:ありがとうございました~ おつかれさまでした!