GM:それではロードムービー血煙爆鎖、第九夜!
GM:始めていきましょう。
GM:よろしくお願いします!
海老名天樹:よろしくおねがいしまーす
七星信貴:よろしくお願いしまーす!
由良輝一:よろしくおねがいしまーす
糸繰晶:よろしくお願いします!
三峰久奈:よろしくおねがいしまーす
GM:前回、ええとまあ、
GM:イニシアティブ表の通りにクライマックスフェイズが終わりまして、
GM:エピローグですね。
GM:誰からやります?
GM:やること決まってる人ー。
GM:というかやりたい人ー。
海老名天樹:3人死人がおり、生きているシノビは二人しかおらず…
GM:なんか魂掴まってる人たちどうすんのかな
GM:三峰さんはやることあるんですよね。とりあえずやります?
三峰久奈:じゃあぶっつけでいきます(直前まで寝ていた
GM:お疲れ様です。
GM:じゃあ出ぶっつけで何卒。そんな感じで。
GM: 
GM:■エピローグ:三峰久奈
:斜歯の研究室。 仕事の追加はあっても減ることは稀で、誰も彼も、忙しそうな様子はあまり変わることはない。
:たとえいつもよりその場にいる人間が一人減ったとしても、変わるとすれば、一人あたまの仕事の分量が増えるぐらいだ。
:「ああ忙しい忙しい」「ちょっと複合機にコピー溜まってるよ——」「今日あの人復帰とか言ってたっけ」「そういえばGL来てないけどなんかあったのかな」
:数人が愚痴り混じりに仕事をしている部屋の扉が開いた。 そこにいる人の仕事の手が止まり、視線が集まる。入ってきたのは顔の大半に火傷跡の残る女の姿。
:しんと静まった室内を、女は誰にも目をくれずにカツカツと音を立てながら奥へと進む。 「……しばらくいなくて面倒をかけた。今日から復帰する」
:「……三峰上席、お疲れさまです……、あの、GL(グループリーダー)は……?」 「顛末は聞いている。有事に動けん奴には退いてもらった」 室内がまたしんとなる。
:女は立ったまま言葉を続ける。 「仕事の配分は追って調整する。『時姫』が生きているという話は聞いた。複数で引き続き、例の2人を監視する体制を敷いてもらう。ついでに、三峰主任が追跡の中で成果を遺した、試製忍具の試験も兼ねる」
:「全員適性検査からだ。 時間はかからん。ラボに行ってこい。 あまり遅くなると、その間にドクターが要らんことを考えつくかもしれんから、早めに行くといい」
:最初の言葉に室内の全員が渋った表情を見せたが、その後の言葉に、蜘蛛の子を散らすように、慌てて仕事を中断して、部屋を出ていく。
:出した指示は、由良輝一と時姫を引き続き監視し、出来る範囲で情報を入手すること。 正直そんなに期待はしていない。一度燃え盛った不死鳥のような男を本気で相手にするのだったら、それこそ、戦闘に特化した中忍以上を用意すべきだからだ。
:データで見たあの男が何かしらボロを出す気もしない。運良く遺伝子情報でも手に入れば儲けものだろう。 妖魔が使うという異空間を通る、試製忍具のデータが集まればそれで十分だ。
:女は次の手を考えながら、誰も居なくなった室内で小さく舌打ちをし、電子タバコを手に取り、口にする。 どうせドクターはついでに余計な検査もするだろうから、数十分は時間はあるだろう。
:息と同時に、煙を吐く。 煙は少し上に向かい、消えていく。
:「……馬鹿が」
://
GM: 
GM:ありがとうございました。
GM:では、えーと、天樹さん? いいですか? 心の準備とか……
海老名天樹:大丈夫です!勝ちます!(もう負けた)
GM:がんばってくださいね~
GM: 
GM:■エピローグ:海老名天樹
海老名天樹:厳重に巻かれた包帯の間から病室の天井が見える。
海老名天樹:どれぐらい眠っていたのかを考える。1日、数週間、あるいは10数時間に過ぎないかもしれない。
海老名天樹:分かるのは全身を鈍い痺れのような、冷えるような痛みが襲っていることと、
海老名天樹:自分がまだ生きているということだ。
海老名天樹:……生きている。
海老名天樹:なにか、声を発しようとしたけれども、ことばは何も出てこなかった。
海老名天樹:声を発せたところで、何もことばは出てこなかっただろう。
海老名天樹:頭の中にぽっかりと空洞があいたように、ひどく凪いでいて。
海老名天樹:頭の中の静寂が、感情さえも覆いつくして、何も波立つものも。
海老名天樹:燃え上がるものもない。
海老名天樹:ただ静かで、
海老名天樹:……生きている。
海老名天樹:拒絶されなければならなかったし、どうしても拒絶し続けられたかったとさえ言える。
海老名天樹:だから、燃え上がる焔に身を焼かれた時も、当然であろうとさえ思った。
海老名天樹:その拒絶を飲み込んで、打ちのめして、折り砕いて、
海老名天樹:だが、手が届かなかった。
海老名天樹:もう少しのところだったはずだ。
海老名天樹:もう少しのところであったはず。
海老名天樹:間違いなどほとんどなかった。途中までは、予定通りに進んでいた。
海老名天樹:思い通りに運んでいる手応えが確かにあって、それが打ち砕かれたのは
海老名天樹:打ち砕いたのは、一貫して拒絶を続けて〈くれていた〉由良貴一ではなくて、人形であったはずの時姫で。
海老名天樹:それが何故かを分かっている。
海老名天樹:「…………」
海老名天樹:息を。
海老名天樹:吐き出すと、麻酔が効いているにもかかわらず、やはり痛みが走った。
海老名天樹:上手くいかなかった。手が届かなかった。もう少しだったはずだ。
海老名天樹:……生きている。
海老名天樹:生きているのなら、もう一度同じことを繰り返せるはずだ。
海老名天樹:もっと邪魔者がいない形で、もっとうまくやれるはずだ。
海老名天樹:……息を吸う。痛みはなかった。発作のような、引き攣れるような可笑しさは消えていた。
海老名天樹:焼かれる前であったなら、時姫にあの袖を引かれる前であったなら。
海老名天樹:由良が時姫に駆け寄り、抱き上げるさまを見る前であったなら。
海老名天樹:敗北したとてきっと、同じことを繰り返していただけだったはずだ。
海老名天樹:だが、頭の中はどうしても静かで。
海老名天樹:そんな気持ちなどひとつも呼び起こされず。
海老名天樹:何だったのだろうかとさえ思う。
海老名天樹:あれは何だったのか。
海老名天樹:あの熱情は嘘だったのか。
海老名天樹:そんなはずはないと思う。
海老名天樹:そんなはずはないと思いながら、ふと視線を動かして、病室の白いばかりの壁を見つめた。
海老名天樹:からだはまだほとんどうまく動かない。
海老名天樹:締め切られた病室の扉を少しの間見つめてから、身じろぎをして首を動かし、
海老名天樹:窓を見やる。
海老名天樹:カーテンは開いていて、窓の向こうにはあおい空がある。
海老名天樹:…………私は、
海老名天樹:どこにも閉じ込められてなどいなくて。
海老名天樹:救われる必要もなくて。
海老名天樹:そして元から、どうしたって愛されたくなどなかった。
海老名天樹:頭の中はただ凪いでいる。これから、
海老名天樹:これから何をしよう?
海老名天樹:生きているのだ。
海老名天樹:今はそれだけ。
海老名天樹:空は、高く、薄い色で晴れ渡っている。
海老名天樹: 
GM: 
GM:ありがとうございました。
GM:えーと 次……どうしような……とりあえず魂組ってことで……
GM: 
GM:■エピローグ:糸繰晶&七星信貴
GM:どんな感じになりましょうね。
GM:由良さんと話す? まず二人。
七星信貴:とりあえず由良さんが灰を回収してるだろうからそれで喚び出すところからスタートするのかな
GM:サモン魂
GM:由良さんそんな感じでよろしいか?
由良輝一:オッケー
GM:イエーイ。よろしゃ。
由良輝一:もう二度と来ないだろうと思っていた場所に来ている。——朽ちた神社。かつての遊び場。かつての家。
由良輝一:落ち葉が吹き飛んでいくのを傍目に、立ち入る。子供の足跡。度胸試しの遊び場にでもされているのだろうか。
由良輝一:少なくとも神はこの家からは去っていったとは思うが、その残滓は残っている。
由良輝一:覚えていた。
由良輝一:床板を踏み抜かないように歩いていった先、開けてはいけないと言われた扉の場所を。
由良輝一:埃と黴が混ざった臭いの中に、それはあった。鳥の羽根だった。
由良輝一:2枚持ち出す。
由良輝一:灰を入れた袋の中に1枚ずつそれを突っ込んで、かつて確かに神が祀られていた場所の前に、袋ごと置いた。
由良輝一:印を切る。伝えられていた言葉を紡ぐ。
由良輝一:死人が行くより先に襲いかかって、捕まえて、冬に備えるように、串刺しにするような、そんな術だ。
由良輝一:鳥はそういうことをする。
由良輝一:ふ、と指先に炎を灯して、袋に向けて火を放った。
由良輝一:それは騙す炎である。
由良輝一:「……で、さあ。なにか言うこと、あると思うんだけど?」手応えを感じてから、由良はそう言った。
糸繰晶:ふと、目が覚める。
糸繰晶:あくまでこれは錯覚なのだろう。
七星信貴:ふ、と目が覚めた。二度と覚めるはずのなかった、その光が。
糸繰晶:しかして、ああ、と状況を理解した上で、
糸繰晶:黙りこくっている。
七星信貴:状況をうまく飲み込めていないのか、臥せったままただ由良の足元を視界に捕らえている。
由良輝一:「……。……何か言うことあると思うんだけど!?七星!?」キレた。
七星信貴:「え、あ」起き上がろうとして、ずっこける。身体がまだ、慣れてない。「ゆ、ゆらさん…?」どこだ、ここ。状況は一切わからない。受けたはずの傷が…いや‥…身体が……
七星信貴:「……鳥…?」
由良輝一:適当な石に適当に座る。「これは申し開きの時間ですよ」
由良輝一:「具体的に言うと、さすがに死に逃げに腹立ったのでちょっとこうして(ろくろの動き)こう」
七星信貴:「し、死に逃げって……」決死の攻撃が届かなかった事の方が正直胸痛い。「あ、あのときは"そう"するのが最善だって……思ったんで……」ばさばさ。身体を動かしながら、なんとなく把握する。これ、由良さんのお姉さんの状態か…?
糸繰晶:ヨタカはスンとしている……
由良輝一:「俺もそう思うんですけど、お前何やったか覚えてる?」スンしてるヨタカはにはちょっと待っててもらおう。
由良輝一:「覚えてるよね?」詰め寄る。
由良輝一:「俺に 対して 何したか、覚えてるよね?」圧。
七星信貴:ハヤブサの鋭いはずの目がおろおろ泳いでる。「あ、あー、えっ……と、えーっと……」由良さんに対して?俺は由良さんに対しては、何もしていないような……。間違って殴った覚えもないし……勘の鈍い男はそこがわからない。
由良輝一:「……。…………」
由良輝一:「お前このまま居残りな」
由良輝一:スン……としているヨタカの方に向き直る。「お前なかなかいい趣味してるじゃん、糸繰」
七星信貴:「い、居残り」学生のような響きを食らった……。ターゲットが変わったであろう隙には必死に頭をぐるぐる回している。うーん。
糸繰晶:「……お褒めに預かり光栄だね」褒められているわけはないのは知っている。
糸繰晶:目の前の男の様子から、事の顛末も大体察しが付いた。何を言っても、ある種仕方がないと思っているのか、ひたすらに口が重い。
由良輝一:「あんたはどうする?」
糸繰晶:「合わせる顔があるとでも」
由良輝一:「いいんだぜ、これから美容室行ったり、喫茶店行ったりしたってよ」
由良輝一:「鏡見る?」
糸繰晶:「ペットにでもなれって?」隣の七星と思しき鳥が鳥である。感覚も相まって、鏡がなくともおおよその見当はついた。
由良輝一:「契約期間は1年だ、悪かねえと思うぜ」ちなみにそこの鳥は死ぬまでだと余計なことを。
糸繰晶:「……1年か」
糸繰晶:「……そうだな」
由良輝一:「お兄さんも一人だと心配なわけよね」そりゃ死人の手も借りたい。
糸繰晶:「あの子は、俺のこと、分かってしまうかな。やっぱり」
由良輝一:「さあどうだか。でも、別にいいんじゃねえの、それで」
由良輝一:「覚悟、あったんじゃなかったっけ?」
糸繰晶:「……うん」こくりと、頷いた。
糸繰晶:「……悪かった。あんたに全部押し付けて。ごめん」
糸繰晶:「でも、ああしなければいけないって、俺は、……俺は、思ったんだ。あの子を、幸せに、するためには……」
糸繰晶:「覚悟はあって、そのつもりだったんだ。……でも、力も、器用さも、足りなかったなあ」
由良輝一:「まあね」
由良輝一:「俺だってそうしただろうよ。いや、そうだからこそ、全部焼いたわ」
由良輝一:「……俺はあんたの力は買ってるよ。そうじゃなきゃわざわざこんなことしねえさ」
由良輝一:「てなわけでどうだい、1年。その後は好きにすりゃあいい。死にたきゃ死なせてやるし、どっかに行きたきゃ行かせてやるよ」
糸繰晶:「期待に応えられるようにするよ」
糸繰晶:「1年経ったら、いかせてくれ。あの子と、……時姫と、同じところに行けるかは分からないけど……いや」
糸繰晶:「今度は、手を伸ばすから。だから、頼む」
由良輝一:「よし、決まりだ。行くぞ」
由良輝一:なんだこのスン……としているハヤブサは。スンするな。と思いながら、死ぬほど雑に七星ハヤブサの脚を捕まえて宙ぶらりんにした。扱いが雑。
七星信貴:「ウワァアーーーッ!!!!」宙ぶらりんになる。所詮鳥なのでもうこうされると何もできない。
由良輝一:「うるせえ!!喚くな!!」
糸繰晶:うるせえな……って顔で見ているヨタカ。
七星信貴:「あっはい」宙ぶらりんは具合が悪いが喚くなと言われたので黙っている。ヨタカの真っ逆さまの顔でも、いい顔はされてないな…ということぐらいはわかったのでスン…とした。
由良輝一:「あんまり喚かれると俺が!疲れるんだよ!!」そうなのである!!
由良輝一:こっち来な、とヨタカを呼んで、何事もなかったかのように帰路につく。
糸繰晶:飛べるかなあ、と恐る恐る羽を広げてみる。途中で休憩等を挟むことにはなったが、何とかどうにか着いていった。
七星信貴:急に宙吊りにするほうが悪くないか…?と、よぎるも、黙っていたが…………
七星信貴:「……えっ俺帰り着くまでこんままですか」ぶらりんちょのまま歩き始めた男の動作に、嫌な予感を漏らした。//
GM: 
GM:ありがとうございました。
GM:では、最後ですね。
GM: 
GM:■エピローグ:由良輝一
由良輝一:有り体に言うと寝不足であった。
由良輝一:鳥を二匹確保したとは言っても、鳥が役に立つことはそうそうない。経験則で知っている。
由良輝一:部屋の片隅に置いてある額縁の中に、華やかなドレスの彼女と、隣に並ぶどうにもパッとしねえツラの男が写っている。
由良輝一:俺の写真写り最高に悪いな……としみじみしている場合でもなんでもなかった。
時姫:手足がないにも関わらず、その写真に映る顔は晴れ晴れと嬉しげに。
時姫:それは、時の流れ故か。或いは時に喧しく、それでも失ったことを感じさせない鳥たちのお陰か。
由良輝一:赤子 何故 三時間とかいう胡乱ワードで検索した検索履歴とか、そういうものも全部放り投げて。
時姫:或いは、共に在った彼の努力によるものか。
由良輝一:そんな気がしたので、今はここにいる。
時姫:しかし今、その顔は、写真に映るものとは裏腹に酷く青褪めている。
由良輝一:ヨタカの術は解いてあった。あとはお前がいきたい時にいけと言った。
由良輝一:部屋にいるヨタカと、気合で寝かしつけた別室の子とその見張りのハヤブサと、そのときを。待っている。
由良輝一:何も言わなかった。
時姫:「……き、いち、さん」
時姫:掠れた声。伸ばす手ももうなければ、彼女を縛り続けた拘束具も最早緩められている。
時姫:もう必要がない。その力すら、残っていないから。
由良輝一:「……無理すんなよ」半分眠い。いつぞやあなたが向けてきたようなとろんとした目で、見返す。
時姫:くすりと笑う。あなたが言う? と表情が語っているが、声を出すことすら苦しいのだろう。代わりに。
時姫:「わたし」
時姫:「わたし、ね、…………」
時姫:無理矢理の駆動への反動で、ひゅ、と喉が鳴る。苦しげな音から、
時姫:わたし、掠れた声で繰り返して、
時姫:「この一年、……ほんとうに、いいのかな、って」
時姫:「ずっと、おもってた、……の」
由良輝一:「……けど、よかったろう、それで」
時姫:微かながら、頷いた。目を細める。それから。
時姫:「ねえ」
由良輝一:式も挙げた。旅行も行った。二人と二匹でピクニックじみたこともした。できるかぎりのことをした
時姫:「輝一さん」
由良輝一:今この瞬間だって、早く死んでくれと願っている。そう願いながら、ここにいる。
時姫:「わがままを、言っても、いい?」
由良輝一:「何だ」
時姫:「さいごに」
由良輝一:「……しゃあねえな、何?」
時姫:「抱かれたいわ」
時姫:「……あなたの、炎に」
時姫:わずかに残った腕を開いて、何もかもを受け入れるように。
時姫:穏やかな笑みを湛えて、時姫はあなたを求める。
由良輝一:「……」嫌だ、と言いたかった。最期くらい、普通の人間と同じように迎えてほしかった。
時姫:「輝一さん」
時姫:呼ぶ声は細く、
時姫:それでも力強く、あなたを求めている。
由良輝一:「そうか」それだけ言うと、その身体を抱き上げる。
由良輝一:「晶、来い」
時姫:抱き上げられて、ほっと表情を緩める。
糸繰晶:羽ばたきはもう慣れたもので、するりと彼らの傍へと飛ぶ。
時姫:甘い殺意を全身に巡らせながら、愛しい人へと身体を預けた。
時姫:見慣れた姿に、笑う。
由良輝一:「ま、これで最期の外だろうわな」
糸繰晶:時姫の笑顔に、困ったように表情を緩めた。鳥の姿でも意外と分かってもらえるらしい、というのはこの1年で気づいたことだ。
時姫:それは同じ血を引いているが故か、生前結んだ縁からか。
時姫:「外」
時姫:「……ええ、外、ね」
時姫:遠く、懐かしむような声。
由良輝一:「家焼くわけにゃ行かねえもん」
時姫:「あのときも、連れ出してくれたわ」
由良輝一:「俺はいつだって加減ができねえんだ」
時姫:「うん」
時姫:「……うん」
時姫:だから、と。
時姫:袖を引く手はもうないけれど。
由良輝一:人気のない、燃えるものもない、そういう近所の場所はおおよそ把握している。
由良輝一:どこが一番いいか考えて、結局、見晴らしのいい場所になった。
時姫:それを見る瞳すら、徐々に霞んでいく。
由良輝一:極端な話、この怒りで、殺意で、どうしようもなさで、街一つ焼いてしまったっていいくらいだった。
由良輝一:それは、違う。
由良輝一:己の感情のままに動くことを徹底して律してきたからこそ、分かる。
由良輝一:それは誰も望んじゃいないのだ。
由良輝一:「時姫」
時姫:「なあに」
由良輝一:由良輝羅ではない。最初から最後まで、時姫だった。
由良輝一:時姫という女を愛し、憎み、今日まで過ごしてきた。
由良輝一:「……時姫」
時姫:「なあ」
時姫:「に?」
由良輝一:同じ血を継いでいたとしても。
由良輝一:「……何でもないよ」
時姫:赤い瞳をぱちぱちと瞬く。
由良輝一:顔を近づけて。あなたの頬に、雫が一つ。
由良輝一:「愛してるよ」
時姫:それを認めることもできないのか、焦点の合わぬ瞳でただ輝一を見返して、
時姫:「ええ」
時姫:「わたしも」
時姫:「あなたを、愛してます――」
由良輝一:口づける。息を吹き込む。その息が即座に熱風と化して、内部から時姫を焼く。
時姫:熱が回る。
時姫:焦がれた熱。焦がれる熱。全てを焼き尽くして、その身体を還していく炎。
時姫:焼かれてもう声の出せぬ喉が、唇が、
時姫:きいちさん、
時姫:そう、名を呼んで。
時姫:微笑みのうちに、その総身は炎に包まれる。
由良輝一:すべてを、際限なく。最期の手を紡ぐ中に、ヨタカを手の動きだけで呼ぶ。
由良輝一:燃えていく。髪を掠めた炎が緑に変わる。燃えていく。何もかもをなくしていく。
糸繰晶:ヨタカはその最期を、目に焼き付けようと見尽くしていた。
由良輝一:そうして全てが灰に帰って、真っ白な灰に包まれた手だけが、残る。
時姫:灰は何も語らない。
時姫:ただ、由良輝一は、その瞬間全てから解放される。
時姫:愛した女への殺意からも、
時姫:ただ一人残された忘れ形見への、殺意からも。
由良輝一:真上に手を振り上げた。雪が落ちてくるみたいだった。
糸繰晶:灰を目前にして、合図には少しだけ遅れて飛んでいく。そして、主のことを見上げていた。
由良輝一:窓の向こうを見ながら、こんなこともあるのね、と言ったことを思い出していた。
由良輝一:「……どうして……」
由良輝一:「どうしてだよ!!」
由良輝一:「どうして、こんなことにならなきゃいけないんだ、」
由良輝一:「俺達が何をしたっていうんだよ……俺達が……」
糸繰晶:「……輝一、……」
由良輝一:見上げるヨタカのことなんて気にも留めずに、男はただ泣いていた。
由良輝一:気に留めることなどできなかった。
由良輝一:とうにいなくなっているものだと思っていた。
由良輝一:一年間押さえつけていたものがどっと溢れて、灰にまみれた手で顔を拭って、煤汚れを作っていた。
GM:あなたを汚す灰は、しかし奇妙に暖かく。
GM:焼け落ちる前の腕に包まれるような、
GM:それは、
GM:確かに錯覚でしか有り得ないのだけれど。
由良輝一:「……あー、やべ、帰らねえとな……」
由良輝一:息を吐く。ようやく見上げるヨタカのことに気づいて、目をくれる。
由良輝一:「……俺はもう王子様やめたのよ。次はあんたの番でしょ」
糸繰晶:「……うん」
糸繰晶:「でも、礼は言っておきたかったんだ」
糸繰晶:「ありがとう」
糸繰晶:「俺は、この一年が人生で一番楽しかった」
糸繰晶:「……時姫と会わせてくれて、ありがとう」
由良輝一:「ふふ」
由良輝一:「律儀なもんだね」だいぶ無茶を振った気もしたんだけど。
由良輝一:「それじゃあ、あとよろしく」歩き出す。振り返らない。
由良輝一:もし帰ってきたら、その時は扉を開けよう。それだけだ。
糸繰晶:「ああ、任せて」
糸繰晶:「……どうか、元気で」
糸繰晶:羽ばたく音が一つ。
糸繰晶:ヨタカは飛んでいく。
糸繰晶:愛したひとに、今度こそ、手を伸ばすために。
由良輝一:帰ったらシャワー浴びて洗濯物してそれから何?たぶん七星がキレてそうな気がするのでそれと、ああもう忙しい。
由良輝一:悲しみに暮れている暇はない。誤魔化していくしかない。
由良輝一:一人だと思っていた。一人ではなくなった。また一人になった。一人ではない。
由良輝一:守らなければならない。
由良輝一:それが今、胸の中で燃えている感情の、確かな名前だ。
由良輝一:そこに負の要素はない。