GM
月下の儀式! 相対する夫婦! 現れる獣! さらわれる妻!
GM
◆メインフェイズ第一サイクル第二シーン シーンプレイヤー:鴟尾鴞字郎
境 仁悟
鼻先には、まだわずかに血の香りが残っている気がした。
境 仁悟
居てもたってもいられず山に飛び込み、あてどなくこうして駆けている。
境 仁悟
あてがあるわけでもなく、気配を追えているわけでもない。
境 仁悟
見当違いの方向へ行っているのかさえ分からないが、
境 仁悟
確かに斬ったはず、その命を断ったはずだった。
境 仁悟
そもそも、無事を案ずることが許されるのか?
境 仁悟
やがて、とうとう、休みなく駆けていた足がもつれた。
境 仁悟
まろぶことはない。舌打ちをして、たたらを踏み、立ち止まる。
鴟尾 鴞字郎
その上から、がさがさと葉をかきわけ、枝を折る音。
鴟尾 鴞字郎
敵意はないと言いたげな、忍びにしてはわざとらしい足音が、森の中に響いた。
鴟尾 鴞字郎
小さな人影。童と言うにもまだ小さい。
鴟尾 鴞字郎
「鴟尾鴞字郎(しびのきょうじろう)だ。以後お見知りおきを」
鴟尾 鴞字郎
「見てたよぉ。さっきの。いいショーだった」
鴟尾 鴞字郎
「横から掻っ攫われる妻。それをまんまと取り逃がす夫、ってところかい」
境 仁悟
陰気な顔になお苦さを滲ませて、相手を睨む。
鴟尾 鴞字郎
「さっきの。なんだありゃ。儀式かい?」
鴟尾 鴞字郎
「なんでまた、お前さん、あんな事を?」
境 仁悟
「……それが、俺に下された使命であったからだ」
鴟尾 鴞字郎
「使命ときたか。あれが滞りなく行われると、何が起こるってんだ?」
境 仁悟
「あの男を追っていたのなら、なおさら邪魔をしてくれるな」
鴟尾 鴞字郎
「そんな用途のために、その刀を作った覚えはないからね」
境 仁悟
敵意はなく、相手を切るというわけではない。
鴟尾 鴞字郎
「その刀には……その名は彫っちゃいないがね」
鴟尾 鴞字郎
その鍔には小さな小さな文字で『おきょう』と刻まれている。
境 仁悟
もともとよくはなかった顔色が、蒼白になっている。
鴟尾 鴞字郎
「少し話が逸れたかね。つまり、その刀は何のために作られたのかという話だよ」
鴟尾 鴞字郎
「……ちゃんと分かってるじゃないか」
境 仁悟
「俺が、なぜ妻を斬ったか分からない、と」
境 仁悟
「この刀を鍛えたあなたであれば、俺よりもあの獣に詳しいだろう」
境 仁悟
「その申し出は、願ってもないことだ。……」
鴟尾 鴞字郎
「よっしゃあ!そうこなくっちゃあな!」
境 仁悟
そう言いながらも、男の言葉には迷いが滲んでいる。
境 仁悟
迷いの中身は、明確に言葉にはされぬままだ。
鴟尾 鴞字郎
「見返りは求めねえ。かわりに条件が二つ」
鴟尾 鴞字郎
「ひとつ、必ずその刀であの獣にとどめを刺すこと」
鴟尾 鴞字郎
「もうひとつ、あの獣を殺すべき理由を詮索しないこと」
鴟尾 鴞字郎
「……そのときは、お前さんがその刀の持ち主には相応しくねえって事になるな」
鴟尾 鴞字郎
「なに、そう気にしなくていい。おれも坊やのその煮え切らない態度に突っ込まない。おれの刀の用途にも口出しをしない。公平だろう?」
境 仁悟
「俺以外に、この刀にふさわしいものなどもはやいない」
境 仁悟
それは確信をもって紡がれた言葉ではなかった。
境 仁悟
「そうでなければ、俺はあんなことなどしなかった」
境 仁悟
言いながら、再び山中を歩き出そうとする。
鴟尾 鴞字郎
「……ここらで別行動だな。おいらもあれを追いかけよう」
境 仁悟
「いや、獣は俺が斬る。俺に、すぐ伝えてくれ」
鴟尾 鴞字郎
「悔しいよな?得体も知れない獣に女を取られてよ」
鴟尾 鴞字郎
「今この瞬間にも犯されてるか殺されてるか、わかりもしねえ」
鴟尾 鴞字郎
「そうなる前に、うまく殺せるといいねえ」
鴟尾 鴞字郎
2D6>=5 (判定:用兵術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 7[1,6] > 7 > 成功
境 仁悟
ET
ShinobiGami : 感情表(5) > 憧憬(プラス)/劣等感(マイナス)
鴟尾 鴞字郎
ET
ShinobiGami : 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
境 仁悟
打ちのめされたような表情は、妻の身を案じる男の顔には、
境 仁悟
あるいは、妻を穢すやもしれぬ獣への怒りや憎しみに燃える顔には見えない。
鴟尾 鴞字郎
目の前の男の胸中も、その秘密も、長命は知らず。
鴟尾 鴞字郎
けれどそれでいい。この男が、ただ役割さえ果たしてくれるのなら。
鴟尾 鴞字郎
「……さて、いい出会いだった。そろそろ行くとしようかね」
境 仁悟
「示してみせよう。俺が、この刀を振るうにふさわしいと」
鴟尾 鴞字郎
「まあ、また会おうや!」名前すら訊かず、再び闇の中へ。
境 仁悟
その姿が消え、気配さえ辿れなくなったのを確認してから、
境 仁悟
呟いて、自分もまた闇の中に身を躍らせた。
GM
◆第一サイクル第三シーン シーンプレイヤー:境清花
境 清花
KST
ShinobiGami : 回想シーン表(8) > きらきらと輝く笑顔。今はもう喪ってしまった、大事だったアイツの笑顔。
GM
仁悟さんがお仕事終わって道場から帰ってきたとことか?
GM
GMは勝手に提案しますが、なんか勝手に案を出してるだけなので、気にしなくても大丈夫なやつです。
GM
二人が一つ屋根の下暮らすようになってよりまだ間のない頃。
境 仁悟
あなたに一瞥をくれて、何も言わずに風呂へと向かう。
境 仁悟
目を合わせることさえ、はじめは避けているように見えた。
境 清花
それでも風呂はきちんと沸いている。着替えの用意も滞りない。
境 仁悟
風呂に入り、用意された着替えを身に着けて、居間へ。
境 清花
仁悟が風呂に入る間に、居間には出汁の香りがしている。
境 仁悟
あなたをねぎらいもしなければ、不出来を怒鳴りつけるようなこともない。
境 清花
一汁三菜。白くふっくらとした米。それが丁寧に配膳される。
境 仁悟
いただきますの言葉さえなく、椀を手に取る。
境 仁悟
水を向けられねば、ほとんど何もしゃべらない。
境 仁悟
今日あったことであるとか、反対にあなたには何か変わったことはなかったとか。
境 清花
お家の取り決めに、拾六の娘をもらうことになった仁悟が、どんな気持ちか。
境 清花
家事の他には、さして見るべきところもない娘だ。
境 仁悟
何を考えているのか、あなたに言葉にして話す男ではなかった。
境 仁悟
気に入らない、という態度ではないが、扱いかねている、という風には見えたかもしれない。
境 仁悟
ただ、家のことはあなたにすっかり任せて、朝早くに道場に行く。
境 清花
それを見送り、一切に手を抜かず家事をする。
境 仁悟
それに対する礼を、男が述べることはない。
境 仁悟
自分のために作られたものへの感想さえ、こうして聞かねば答えぬ有様だ。
境 仁悟
そして、やはり無言で食べ終わり、椀と箸を卓の上に置いた。
境 仁悟
食べはする。用意された夕食を、すっかり平らげている。
境 仁悟
「……」茶が注がれるのを見て、上げかけていた腰を下ろした。
境 清花
聞けば答えてはくれる。話しかけて、拒否されたことはない。
境 仁悟
ただし、自分から口を開くことはほとんどない。
境 清花
ただ、清花を取り扱いかねているというのはよくよくわかっている。
境 仁悟
顔を上げて、男があなたの方へ目を向けた。
境 仁悟
言って、それから顔を俯かせる。あなたから目を背ける。
境 清花
「お家同士の婚姻です。仁悟さまはわたくしのことをご存じないし、わたくしも仁悟さまのことをよく存じません」
境 清花
「ですけれど、……わたくしは、仁悟さまと添うたのです」
境 清花
「わたくしは、ともに行きてゆく方を、愛する努力をいたします」
境 清花
「……それがご迷惑なら、おっしゃってくださいまし」
境 仁悟
慌てたような言葉は、あなたの顔を見るとまた途切れる。
境 仁悟
わずかに勢い込んだ言葉は、また尻すぼみだ。
境 仁悟
あまり、答えにはなっていないのが自分でも分かるのだろう。
境 仁悟
俯いたまま、空になった湯呑に目を落としている。
境 清花
「……わたくしが、もっと可愛げのある、親しみやすい女であれば、よかったでしょうか……」
境 清花
「……けっして、悪く思うわけではないのです」
境 清花
「無理に好いてくれというわけではないのです」
境 仁悟
あなたを見つめる。その表情はわずか強張り、
境 仁悟
怒っているようでもなく、ただ、どこか焦るように、
境 清花
「……出過ぎたことを、申しましたでしょうか……」
境 仁悟
「だから、そんなに悲しそうな顔をするな」
境 清花
そんなふうに、ゆっくりと、ゆっくりと添うてきて。
境 仁悟
刃を押し込むように体重が駆けられ、男の体が宙を舞う。
境 仁悟
視線を己の妻へ向けて、男はあからさまな安堵を滲ませた後、
霽月
「それは良い。清らかな花が手折られるよりも、よほど」
境 仁悟
意識もまた、そこへ集中しようとしている。
境 清花
「仁悟さんを、斬らせるわけには……まいりません、霽月さま」
霽月
「とはいえ、俺もむざむざ斬られるわけにはいかぬ」
境 清花
「仁悟さんは、わたくしをもう一度お斬りにいらしたのではないのですか」
境 仁悟
「そうでなければ、なぜ妻を手にかけよう」
霽月
「お前が俺から奪うに値するは一つ、この頸のみ」
境 仁悟
刀を構え、一息に距離を詰め、上段から斬りかかる。
境 清花
声だけが、どこからとなく。音の位置も遮蔽されている。
境 清花
「仁悟さん。わたくしは、あなたに斬られて死ぬ覚悟でした」
境 清花
「……仁悟さんは今、わたくしを……清花をどうお思いなのですか……?」
境 清花
2D6>=5 (判定:幻術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 9[3,6] > 9 > 成功
境 仁悟
ET
ShinobiGami : 感情表(4) > 忠誠(プラス)/侮蔑(マイナス)
境 清花
ET
ShinobiGami : 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
境 仁悟
「そしてもはや、お前を斬ることはできない」
境 清花
仁悟と霽月の間に、割り込むようにして立っている。
GM
◆メインフェイズ第一サイクル第四シーン シーンプレイヤー:境仁悟
境 仁悟
刀は抜いたまま、妻を見つめている。刃を向けるどころか、構えてすらいない。
境 清花
「……傷つくところを、見たくないのです」
境 仁悟
「互いのことを知れば夫婦らしくなれると」
境 仁悟
2D6>=5 (判定:伝達術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 7[3,4] > 7 > 成功
GM
初めて秘密が抜けたな。ディスコードにてお渡しします。
境 清花
「わたくしは、どうしたらよいのですか?」
境 清花
「あなたをお恨みしたくないと思って、そう思って、わたくしは」
境 清花
「……あなたを知ってまいりました。そのように願って、二年、あなたとともにございました」
境 清花
「……でも、今……わからなくなってしまうのです」
境 仁悟
「お前を、斬らねばならなかったのと同じように」
境 仁悟
「傷つくところを見たくないというのなら」
境 仁悟
「お前が、女を盾にする男ではないと思っている」
GM
獣さんがちゃちゃっと秘密抜きしたいらしいので
GM
◆メインフェイズ第二サイクル第一シーン シーンプレイヤー:霽月
霽月
道を戻る。元よりこの竹林の逃避行は、境仁悟から逃れるためのもの。
霽月
下生えを踏み、岩を越え、崖を跳び、川を上り。
霽月
明るく浮かぶ月の下、清花が己の血に染まった儀式場に戻る。
霽月
……ここに戻るまで、終ぞ襲われることはなかった。
霽月
安息はなく、しかし死に場所もなく、逃れに逃れて。
霽月
霽月という名を清花に与えられるまで、俺には名はなかった。
霽月
ただ一つの呼吸さえも、木陰から木陰へと移らねば得られなかった、
霽月
2D6>=5 (判定:憑依術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
霽月
語り終えたあと、確かめるように、己の名前を繰り返した。