GM
よし、では
GM
「化粧応神」第二夜始めていきましょう。
GM
よろしくお願いします!
境 仁悟
よろしくお願いします
境 清花
よろしくお願いいたします
鴟尾 鴞字郎
アオーン
霽月
よろしくお願いします。
GM
前回のあらすじ!
GM
月下の儀式! 相対する夫婦! 現れる獣! さらわれる妻!
GM
そして愛情。
GM
からの超越者がついに動きます。
GM
と、いうわけで、鴟尾さんの手番ですね。
GM
よろしくお願いします。
鴟尾 鴞字郎
ザッ
GM
◆メインフェイズ第一サイクル第二シーン シーンプレイヤー:鴟尾鴞字郎
境 仁悟
山中を駆ける。
境 仁悟
鼻先には、まだわずかに血の香りが残っている気がした。
境 仁悟
自分の体から漂う血だ。
境 仁悟
己の血ではなく、妻の血だった。
境 仁悟
妻と、それを攫った獣を追って、
境 仁悟
居てもたってもいられず山に飛び込み、あてどなくこうして駆けている。
境 仁悟
あてがあるわけでもなく、気配を追えているわけでもない。
境 仁悟
見当違いの方向へ行っているのかさえ分からないが、
境 仁悟
立ち止まることができなかった。
境 仁悟
あれが、獣だと刀が告げている気がする。
境 仁悟
ならば、斬らねばならない。
境 仁悟
しかし、その腕に抱かれた清花は?
境 仁悟
確かに斬ったはず、その命を断ったはずだった。
境 仁悟
だのに、
境 仁悟
まだ死んでいない。
境 仁悟
清花は無事なのか
境 仁悟
そもそも、無事を案ずることが許されるのか?
境 仁悟
そう考えるうちに、空は白み、
境 仁悟
やがて、とうとう、休みなく駆けていた足がもつれた。
境 仁悟
まろぶことはない。舌打ちをして、たたらを踏み、立ち止まる。
境 仁悟
そうして、再び駆け出そうとする。
鴟尾 鴞字郎
その上から、がさがさと葉をかきわけ、枝を折る音。
鴟尾 鴞字郎
敵意はないと言いたげな、忍びにしてはわざとらしい足音が、森の中に響いた。
鴟尾 鴞字郎
「辛気臭ぇ顔だなあ」
境 仁悟
反射的に刀の柄に手をかけた男もまた、
境 仁悟
湧いた殺気を霧散させる。
境 仁悟
「……」
境 仁悟
見覚えのない相手だった。
鴟尾 鴞字郎
「よっと」
鴟尾 鴞字郎
飛び降りる。眼前へ。
鴟尾 鴞字郎
小さな人影。童と言うにもまだ小さい。
鴟尾 鴞字郎
「鴟尾鴞字郎(しびのきょうじろう)だ。以後お見知りおきを」
境 仁悟
しかし、忍びであろう。
境 仁悟
「……境仁悟。悪いが……」
鴟尾 鴞字郎
「忙しいってかい?」
境 仁悟
「そうだ」
鴟尾 鴞字郎
「見てたよぉ。さっきの。いいショーだった」
鴟尾 鴞字郎
「横から掻っ攫われる妻。それをまんまと取り逃がす夫、ってところかい」
境 仁悟
陰気な顔になお苦さを滲ませて、相手を睨む。
境 仁悟
「あの獣を追っていた忍びか」
鴟尾 鴞字郎
「まあね」
鴟尾 鴞字郎
「さっきの。なんだありゃ。儀式かい?」
鴟尾 鴞字郎
「なんでまた、お前さん、あんな事を?」
境 仁悟
「……それが、俺に下された使命であったからだ」
境 仁悟
でなければ、あんなことなどするものか。
鴟尾 鴞字郎
「使命ときたか。あれが滞りなく行われると、何が起こるってんだ?」
境 仁悟
言外に言って、拳を握り締める。
境 仁悟
「それは……」
境 仁悟
「これから分かる」
境 仁悟
「あの男を追っていたのなら、なおさら邪魔をしてくれるな」
境 仁悟
「俺は、あれを斬らねばならん」
鴟尾 鴞字郎
「ほう」
鴟尾 鴞字郎
「まったく不思議な話だ」
鴟尾 鴞字郎
「そんな用途のために、その刀を作った覚えはないからね」
境 仁悟
「……」
境 仁悟
「待て」
境 仁悟
「鴟尾鴞字郎と言ったか?」
鴟尾 鴞字郎
「そうだよ」
境 仁悟
目の覚めるような顔で言った。
境 仁悟
刀を抜く。
境 仁悟
敵意はなく、相手を切るというわけではない。
鴟尾 鴞字郎
「その刀には……その名は彫っちゃいないがね」
境 仁悟
「……」
鴟尾 鴞字郎
刀身には何の銘も刻まれていない。
境 仁悟
「だがこの刀は確かに……」
境 仁悟
言葉は消えて、狼狽が滲む。
鴟尾 鴞字郎
「……鍔を見てみな」
境 仁悟
言われた通りに、鍔を検める。
鴟尾 鴞字郎
その鍔には小さな小さな文字で『おきょう』と刻まれている。
鴟尾 鴞字郎
「それがおいらの本名だ」
境 仁悟
「……」
境 仁悟
刀を収めて、息をつく。
境 仁悟
もともとよくはなかった顔色が、蒼白になっている。
境 仁悟
「いいや、だが」
境 仁悟
「……確かに、俺は……」
境 仁悟
ひとりごとのような言葉は途中で消える。
鴟尾 鴞字郎
「……んああ」
鴟尾 鴞字郎
「少し話が逸れたかね。つまり、その刀は何のために作られたのかという話だよ」
鴟尾 鴞字郎
「知ってるかい、坊や?」
境 仁悟
「獣を……」
境 仁悟
「獣を殺すためのものだろう」
鴟尾 鴞字郎
「……ちゃんと分かってるじゃないか」
境 仁悟
「なればこそ、俺はあの獣を追っている」
鴟尾 鴞字郎
「手伝おうか」
境 仁悟
「……」
境 仁悟
瞳に迷いと疑念が浮かぶ。
境 仁悟
「お前、いや……あなたは」
境 仁悟
「俺が、なぜ妻を斬ったか分からない、と」
境 仁悟
「確かにそう言ったな」
鴟尾 鴞字郎
「ああ」
境 仁悟
「…………」
境 仁悟
「この刀を鍛えたあなたであれば、俺よりもあの獣に詳しいだろう」
境 仁悟
「その申し出は、願ってもないことだ。……」
境 仁悟
「……」
鴟尾 鴞字郎
「だろう?」
境 仁悟
「ありがたく、助力を受けたい」
鴟尾 鴞字郎
「よっしゃあ!そうこなくっちゃあな!」
境 仁悟
そう言いながらも、男の言葉には迷いが滲んでいる。
境 仁悟
迷いの中身は、明確に言葉にはされぬままだ。
境 仁悟
「よろしく頼む」
鴟尾 鴞字郎
「……あー、ちょっと待て」
鴟尾 鴞字郎
「見返りは求めねえ。かわりに条件が二つ」
鴟尾 鴞字郎
「ひとつ、必ずその刀であの獣にとどめを刺すこと」
鴟尾 鴞字郎
「もうひとつ、あの獣を殺すべき理由を詮索しないこと」
境 仁悟
「……破ればどうなる」
鴟尾 鴞字郎
「……そのときは、お前さんがその刀の持ち主には相応しくねえって事になるな」
鴟尾 鴞字郎
「なに、そう気にしなくていい。おれも坊やのその煮え切らない態度に突っ込まない。おれの刀の用途にも口出しをしない。公平だろう?」
境 仁悟
「なるほど」
境 仁悟
「分かった、だが……」
境 仁悟
「俺以外に、この刀にふさわしいものなどもはやいない」
境 仁悟
それは確信をもって紡がれた言葉ではなかった。
境 仁悟
「そうでなければ、俺はあんなことなどしなかった」
鴟尾 鴞字郎
「……どういう意味なのかねえ……」
境 仁悟
言いながら、再び山中を歩き出そうとする。
鴟尾 鴞字郎
「……ここらで別行動だな。おいらもあれを追いかけよう」
境 仁悟
視線を其方へ向ける。
境 仁悟
「あの獣が妻をまだ連れていたら……」
境 仁悟
「…………」
鴟尾 鴞字郎
「あん?」
境 仁悟
「いや、獣は俺が斬る。俺に、すぐ伝えてくれ」
鴟尾 鴞字郎
「ああ。わかってる」
鴟尾 鴞字郎
「悔しいよな?得体も知れない獣に女を取られてよ」
境 仁悟
「……」
鴟尾 鴞字郎
「今この瞬間にも犯されてるか殺されてるか、わかりもしねえ」
鴟尾 鴞字郎
「そうなる前に、うまく殺せるといいねえ」
境 仁悟
「……俺は、……」
境 仁悟
唇がわななき、手が刀の柄を握る。
鴟尾 鴞字郎
感情判定(用兵術)を行います
GM
対象は仁悟ですね。判定をどうぞ。
鴟尾 鴞字郎
2D6>=5 (判定:用兵術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 7[1,6] > 7 > 成功
GM
双方ETを。
境 仁悟
ET
ShinobiGami : 感情表(5) > 憧憬(プラス)/劣等感(マイナス)
鴟尾 鴞字郎
ET
ShinobiGami : 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
鴟尾 鴞字郎
友情を取得
GM
優しい。
GM
こんな煽り方しながら友情を……
境 仁悟
いや、劣等感で取ります。
GM
了解しました。
GM
鴞字郎さんは友情を、仁悟さんは劣等感。
GM
続けてどうぞ。
境 仁悟
打ちのめされたような表情は、妻の身を案じる男の顔には、
境 仁悟
あるいは、妻を穢すやもしれぬ獣への怒りや憎しみに燃える顔には見えない。
鴟尾 鴞字郎
「……」
鴟尾 鴞字郎
その顔の意味も分からない。
鴟尾 鴞字郎
目の前の男の胸中も、その秘密も、長命は知らず。
鴟尾 鴞字郎
けれどそれでいい。この男が、ただ役割さえ果たしてくれるのなら。
鴟尾 鴞字郎
……全ては互いの胸の中。
鴟尾 鴞字郎
「……さて、いい出会いだった。そろそろ行くとしようかね」
境 仁悟
「ああ……」
境 仁悟
辛うじて、というような返答。
境 仁悟
「示してみせよう。俺が、この刀を振るうにふさわしいと」
鴟尾 鴞字郎
「ははっ。そいつぁ楽しみだ」
鴟尾 鴞字郎
「まあ、また会おうや!」名前すら訊かず、再び闇の中へ。
境 仁悟
その姿が消え、気配さえ辿れなくなったのを確認してから、
境 仁悟
「どういうことだ……」
境 仁悟
呟いて、自分もまた闇の中に身を躍らせた。
GM
 
GM
ありがとうございました。
GM
 
GM
◆第一サイクル第三シーン シーンプレイヤー:境清花
GM
どんなシーンになるかしら。
境 清花
回想シーンから。回想シーン表
境 清花
KST
ShinobiGami : 回想シーン表(8) > きらきらと輝く笑顔。今はもう喪ってしまった、大事だったアイツの笑顔。
GM
これ仁悟さんの視点でしょ。
GM
夫婦生活回想しますか……?
境 清花
じゃあ……そんな感じでいきましょうか
GM
そんな感じで……どういう頃ですかね……
GM
仁悟さんがお仕事終わって道場から帰ってきたとことか?
GM
GMは勝手に提案しますが、なんか勝手に案を出してるだけなので、気にしなくても大丈夫なやつです。
境 清花
そうですね
境 清花
ついでに時期を二年前にしましょうか
GM
新婚時代~~~!
境 仁悟
新婚時代か…………
GM
では二年前。
GM
家と家との取り決め通り、
GM
二人が一つ屋根の下暮らすようになってよりまだ間のない頃。
境 仁悟
「……帰った」
境 清花
「おかえりなさいまし」
境 仁悟
境仁悟という男は、素気のない男だった。
境 仁悟
笑顔一つ見せずに玄関をくぐり、
境 仁悟
あなたに一瞥をくれて、何も言わずに風呂へと向かう。
境 仁悟
目を合わせることさえ、はじめは避けているように見えた。
境 清花
それでも風呂はきちんと沸いている。着替えの用意も滞りない。
境 仁悟
風呂に入り、用意された着替えを身に着けて、居間へ。
境 清花
仁悟が風呂に入る間に、居間には出汁の香りがしている。
境 仁悟
あなたをねぎらいもしなければ、不出来を怒鳴りつけるようなこともない。
境 仁悟
興味がないがごとくに振る舞っていた。
境 清花
一汁三菜。白くふっくらとした米。それが丁寧に配膳される。
境 仁悟
座卓に腰を下ろして、
境 仁悟
いただきますの言葉さえなく、椀を手に取る。
境 仁悟
「…………」
境 清花
「……お口に合いませんか」
境 仁悟
「いや」
境 仁悟
視線をあなたへ向けて、すぐに逸らした。
境 仁悟
「美味い」
境 仁悟
言って、また黙々と食べ始める。
境 清花
そのさまに、淡い苦笑。
境 仁悟
水を向けられねば、ほとんど何もしゃべらない。
境 仁悟
今日あったことであるとか、反対にあなたには何か変わったことはなかったとか。
境 仁悟
そういうことを聞くこともなかった。
境 清花
ぎこちない夫婦であるとはわかっている。
境 清花
お家の取り決めに、拾六の娘をもらうことになった仁悟が、どんな気持ちか。
境 清花
家事の他には、さして見るべきところもない娘だ。
境 仁悟
何を考えているのか、あなたに言葉にして話す男ではなかった。
境 仁悟
気に入らない、という態度ではないが、扱いかねている、という風には見えたかもしれない。
境 仁悟
ただ、家のことはあなたにすっかり任せて、朝早くに道場に行く。
境 清花
それを見送り、一切に手を抜かず家事をする。
境 仁悟
それに対する礼を、男が述べることはない。
境 仁悟
自分のために作られたものへの感想さえ、こうして聞かねば答えぬ有様だ。
境 仁悟
「……」
境 仁悟
そして、やはり無言で食べ終わり、椀と箸を卓の上に置いた。
境 仁悟
食べはする。用意された夕食を、すっかり平らげている。
境 清花
「もうお部屋にお戻りになりますか?」
境 清花
言いながら、湯呑に温かな茶を注ぐ。
境 仁悟
「……」茶が注がれるのを見て、上げかけていた腰を下ろした。
境 仁悟
「……茶を飲んだらそうする」
境 清花
「かしこまりました」
境 清花
聞けば答えてはくれる。話しかけて、拒否されたことはない。
境 仁悟
ただし、自分から口を開くことはほとんどない。
境 清花
悪い人ではない、と。そう思う。
境 清花
ただ、清花を取り扱いかねているというのはよくよくわかっている。
境 清花
卓の上がきれいに片付けられていく。
境 仁悟
黙って、茶を飲んでいる。
境 清花
「仁悟さま」
境 仁悟
顔を上げて、男があなたの方へ目を向けた。
境 清花
「……わたくしは、お邪魔でしょうか」
境 仁悟
「いや」
境 仁悟
「お前は、よくやってくれている」
境 仁悟
言って、それから顔を俯かせる。あなたから目を背ける。
境 仁悟
「…………」
境 仁悟
「だが、居心地が悪いのならば」
境 仁悟
言葉は途中で消えて、男は湯呑を置いた。
境 清花
「……仁悟さま」
境 仁悟
「……」
境 清花
「お家同士の婚姻です。仁悟さまはわたくしのことをご存じないし、わたくしも仁悟さまのことをよく存じません」
境 仁悟
俯いて、男はその言葉を聞いている。
境 清花
「ですけれど、……わたくしは、仁悟さまと添うたのです」
境 清花
「わたくしは、ともに行きてゆく方を、愛する努力をいたします」
境 清花
「……それがご迷惑なら、おっしゃってくださいまし」
境 仁悟
顔を上げた。
境 仁悟
「俺は……」
境 仁悟
慌てたような言葉は、あなたの顔を見るとまた途切れる。
境 仁悟
迷うように唇が動いた。
境 仁悟
「……迷惑では、」
境 仁悟
「迷惑ではない」
境 仁悟
「だが、俺は、お前を」
境 仁悟
わずかに勢い込んだ言葉は、また尻すぼみだ。
境 仁悟
男は俯いた。
境 仁悟
「……お前を、知るわけにはいかん」
境 清花
「…………何故でしょう」
境 仁悟
「…………」
境 仁悟
「お前はよくやってくれている」
境 仁悟
「俺には、過ぎた妻だと思う」
境 仁悟
「そう思うぐらいだ」
境 清花
「…………」
境 仁悟
「…………だからだ」
境 仁悟
あまり、答えにはなっていないのが自分でも分かるのだろう。
境 仁悟
俯いたまま、空になった湯呑に目を落としている。
境 清花
「……わたくしが、もっと可愛げのある、親しみやすい女であれば、よかったでしょうか……」
境 仁悟
「それは違う」
境 仁悟
いささか慌てたように言う。
境 清花
「……ですが」
境 仁悟
目が泳ぐ。
境 仁悟
「俺は、こういう」
境 仁悟
「こういう男なのだ」
境 仁悟
「そう思ってくれればいい」
境 清花
「……けっして、悪く思うわけではないのです」
境 清花
「でも、……名前も呼んでくださらない」
境 仁悟
「……」
境 清花
「無理に好いてくれというわけではないのです」
境 清花
「わたくしは、ただ」
境 清花
「……清花、と」
境 仁悟
「それは」
境 仁悟
湯呑を置いて、立ち上がる。
境 仁悟
あなたを見つめる。その表情はわずか強張り、
境 仁悟
怒っているようでもなく、ただ、どこか焦るように、
境 仁悟
「…………」
境 仁悟
「お前を、知ることも」
境 仁悟
「お前の名を呼ぶことも」
境 仁悟
「俺は…………俺には、」
境 仁悟
「いや……」
境 仁悟
「だから、それは……」
境 清花
「…………」
境 清花
「……、」
境 仁悟
「…………う」
境 仁悟
うう、と呻き声が零れる。
境 清花
「……出過ぎたことを、申しましたでしょうか……」
境 仁悟
「違う」
境 仁悟
「ああ」
境 仁悟
「清花」
境 仁悟
観念したように名前を呼んだ。
境 清花
「…………」
境 清花
「…………仁悟さま」
境 仁悟
「わ」
境 仁悟
「悪かった」
境 仁悟
「清花」
境 仁悟
「確かに……」
境 仁悟
「名前さえ呼ばぬでは、夫婦としては」
境 仁悟
「そうだな」
境 仁悟
「ちゃんと名を呼ぶ」
境 仁悟
「だから、そんなに悲しそうな顔をするな」
境 清花
「……はい、仁悟さま」
境 清花
「ありがとうございます」
境 仁悟
「…………」
境 仁悟
俯いて、頷くような真似をした。
境 清花
……そんなふうに。
境 清花
そんなふうに、ゆっくりと、ゆっくりと添うてきて。
境 清花
けれど今、その思い出は遠く。
境 仁悟
獣へ向けて刃が振り下ろされる。
霽月
刃を刃で出迎える。
霽月
「見事な一撃」
境 仁悟
「防ぐか!」
境 清花
「……仁悟さん……!」
境 仁悟
刃を押し込むように体重が駆けられ、男の体が宙を舞う。
霽月
「先刻はいくらか呆けていただけだったか」
境 仁悟
「清花、……っ」
霽月
「名はなんという」
境 仁悟
視線を己の妻へ向けて、男はあからさまな安堵を滲ませた後、
境 仁悟
「境仁悟」
境 仁悟
振り払うように吼えて、獣へ向き直った。
霽月
「俺は、霽月」
霽月
「終末の獣とも呼ばれている」
境 仁悟
「やはり、そうか」
境 仁悟
「俺は、お前を斬りに来た」
霽月
「俺をか?」
境 仁悟
「そうだ」
境 仁悟
「終末の獣──」
霽月
「それは良い。清らかな花が手折られるよりも、よほど」
境 仁悟
「…………」
境 仁悟
男の視線は、霽月を捉えている。
霽月
同じく、仮面の内より睨み。
境 仁悟
意識もまた、そこへ集中しようとしている。
境 清花
「仁悟さん、」
境 仁悟
抜き放った刀を構え、
境 仁悟
「清花、今は……」
霽月
「下がっていろ」
境 清花
「いいえ、」
境 清花
「仁悟さんを、斬らせるわけには……まいりません、霽月さま」
霽月
「良い」
霽月
ならば、と刀を納める。
境 仁悟
「何……」
境 仁悟
対する男は刀を構えたまま。
霽月
「とはいえ、俺もむざむざ斬られるわけにはいかぬ」
霽月
「寄らば、”いただく”ぞ」
霽月
両の手を前に出し、徒手空拳にて構える。
境 清花
「仁悟さんは、わたくしをもう一度お斬りにいらしたのではないのですか」
境 仁悟
「……」
境 仁悟
「清花」
境 清花
「……はい」
境 仁悟
かぶりを振る。
境 仁悟
「妻を手当てしたのは、お前か」
霽月
「そうだ」
境 仁悟
「……何をした?」
霽月
「何を」
霽月
「肌に触れたのが不服か」
境 仁悟
「……」
境 仁悟
「はぐらかすな」
霽月
「さあな」
霽月
「斬って捨てた女のことだろう」
境 仁悟
「…………そうだ」
境 仁悟
「俺は、この女を斬った……」
霽月
「恐ろしく鋭利な痕だった」
霽月
「よほどの業物」
境 仁悟
「そうだ」
境 仁悟
「これこそは『化粧応神』」
境 仁悟
「お前を殺すための刀だ、終末の獣」
霽月
「話がわからん」
霽月
「何故清花を斬った」
境 仁悟
「それが」
境 仁悟
「必要であればこそ」
境 仁悟
「そうでなければ、なぜ妻を手にかけよう」
霽月
「そうか」
境 仁悟
「……そうだ」
霽月
「俺は細工なぞしてはいない」
霽月
「問うても無駄だ」
霽月
「お前が俺から奪うに値するは一つ、この頸のみ」
境 仁悟
「ならば、そうさせてもらおう」
境 仁悟
踏み込む。
霽月
面の化粧が妖しく光る。
境 仁悟
刀を構え、一息に距離を詰め、上段から斬りかかる。
境 清花
「……だめです!」
境 清花
胸元で握った拳。
境 清花
否。印を結んでいる。
境 清花
視界が奪われる。
境 仁悟
「……!」
霽月
「……!」
境 清花
「やめてくださいまし」
境 清花
声だけが、どこからとなく。音の位置も遮蔽されている。
境 仁悟
「清花、何故止める」
境 清花
「仁悟さん。わたくしは、あなたに斬られて死ぬ覚悟でした」
境 清花
「どうして今になって、……」
境 清花
「いえ。……理由は、言わずとも」
境 仁悟
「……」
境 清花
「……仁悟さんは今、わたくしを……清花をどうお思いなのですか……?」
境 清花
幻術にて、境仁悟と感情判定。
GM
判定をどうぞ。
境 清花
2D6>=5 (判定:幻術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 9[3,6] > 9 > 成功
GM
ETを。
境 仁悟
ET
ShinobiGami : 感情表(4) > 忠誠(プラス)/侮蔑(マイナス)
境 清花
ET
ShinobiGami : 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
境 仁悟
忠誠
境 清花
怒りを。
GM
了解しました。
境 仁悟
「俺は……」
境 仁悟
「お前を斬らねばならなかった」
境 仁悟
「そしてもはや、お前を斬ることはできない」
境 仁悟
「……」
境 仁悟
「それは、どちらも同じ理由だ」
境 清花
「…………」
境 清花
ふわりと花弁の幻影が消えて失せる。
境 清花
仁悟と霽月の間に、割り込むようにして立っている。
GM
 
GM
◆メインフェイズ第一サイクル第四シーン シーンプレイヤー:境仁悟
境 仁悟
刀は抜いたまま、妻を見つめている。刃を向けるどころか、構えてすらいない。
境 仁悟
「……清花、そこをどいてくれ」
境 清花
「…………」
霽月
清花のがわに立っている。
境 清花
「忍にはあるまじきことでしょうが」
境 清花
「……傷つくところを、見たくないのです」
境 仁悟
「だが、それでは……」
境 仁悟
「……清花」
境 仁悟
「お前は、……」
境 仁悟
「お前は今、何を、考えているのだ」
境 仁悟
「互いのことを知れば夫婦らしくなれると」
境 仁悟
「以前、お前は言ったな」
境 清花
「……はい」
境 仁悟
「俺は今ならば」
境 仁悟
「いくらでもお前のことを知ろう」
境 仁悟
「……教えてくれ」
境 仁悟
秘密探ります……
GM
特技は?
境 仁悟
伝達術で。
GM
はい。伝達術で清花の秘密ですね。
GM
判定をどうぞ。
境 仁悟
2D6>=5 (判定:伝達術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 7[3,4] > 7 > 成功
GM
仁悟と、感情共有で鴞字郎にですね。
GM
初めて秘密が抜けたな。ディスコードにてお渡しします。
GM
秘密の受け渡しが完了しました。
GM
では、どうぞ。
境 清花
「………………」
境 仁悟
「な」
境 仁悟
なぜ、と唇が言葉を紡ぐ。
境 清花
「…………」
境 清花
目を伏せる。
境 仁悟
声にはならなかった。
境 仁悟
よろめいて、踏み止まる。
境 清花
「仁悟さん。……わたくしは」
境 清花
「わたくしは、どうしたらよいのですか?」
境 清花
「あなたをお恨みしたくないと思って、そう思って、わたくしは」
境 仁悟
「俺は……」
境 仁悟
「待て、いや」
境 仁悟
「そんなことなら」
境 仁悟
「そのようなことなら、俺のことなど」
境 仁悟
「いくらでも恨んでくれていい」
境 仁悟
「そうでもなければ……」
境 清花
「……あなたを知ってまいりました。そのように願って、二年、あなたとともにございました」
霽月
「……」
境 清花
「……でも、今……わからなくなってしまうのです」
境 清花
「……どうしたらいいのか……」
境 仁悟
「俺は……」
境 仁悟
「俺は、お前を斬った男だ……」
境 仁悟
「なぜお前に、今さら指図などできよう」
境 仁悟
「…………」
境 仁悟
「無事なのか」
境 清花
「はい」
境 仁悟
「そうか。……そうか」
境 仁悟
項垂れるようにして、頷いている。
境 仁悟
「……清花」
境 清花
「……はい」
境 仁悟
「俺は、その獣を斬らねばならん」
境 仁悟
「お前を、斬らねばならなかったのと同じように」
境 仁悟
「だが、お前が……」
境 仁悟
「傷つくところを見たくないというのなら」
境 仁悟
「今はやめにする」
霽月
「……」
境 清花
「……仁悟さん……」
境 仁悟
「俺を知れば」
境 仁悟
「お前は俺にきっと怒るだろう」
境 仁悟
「……」
境 仁悟
「お前に、」
境 仁悟
「……いや」
境 仁悟
「清花」
境 清花
「……なんでしょう」
境 仁悟
「帰って来い、と」
境 仁悟
「言うことはできない」
境 仁悟
「……」
境 清花
「……言ってはくださらないのですね」
霽月
「清花」
霽月
「行こう」
境 清花
「……霽月さま」
境 仁悟
「終末の獣」
境 仁悟
呼びかける。
霽月
面の内の視線を寄こす。
境 仁悟
「お前が、女を盾にする男ではないと思っている」
霽月
「無論」
境 仁悟
「……」
霽月
「しかし、いささか、斬り合うには早すぎる」
境 仁悟
「ああ」
霽月
「知らぬことが多すぎる」
霽月
「また相まみえよう」
霽月
「果し合うときがいずれ来る」
境 仁悟
「……」
霽月
「そのときは、そう、一匹の獣さながらに」
霽月
「戦を交わそう」
境 仁悟
肯いた。
霽月
清花と共に去る。
境 仁悟
それを無言のまま見送って、
境 仁悟
刀を収め、踵を返した。
GM
GM
ありがとうございました。
GM
では第一サイクルはこれにて終了。
GM
明日は第二サイクルから再開としましょう。
GM
よろしくお願いします。
GM
本日はこれにて終了 お疲れ様でした!
境 仁悟
お疲れ様でした
霽月
お疲れ様でした。
境 清花
お疲れさまでございました
鴟尾 鴞字郎
おつかれさまです!
GM
終わったところでなんですが
GM
獣さんがちゃちゃっと秘密抜きしたいらしいので
GM
ちょっとやりましょう。
霽月
そろーるなるものをする。
GM
◆メインフェイズ第二サイクル第一シーン シーンプレイヤー:霽月
霽月
道を戻る。元よりこの竹林の逃避行は、境仁悟から逃れるためのもの。
霽月
足跡や記憶よりも、血の残り香を頼りに行く。
霽月
下生えを踏み、岩を越え、崖を跳び、川を上り。
霽月
明るく浮かぶ月の下、清花が己の血に染まった儀式場に戻る。
霽月
……ここに戻るまで、終ぞ襲われることはなかった。
霽月
正体の分からぬ無数の追手が、今はない。
霽月
終末の獣と呼ばれている。
霽月
俺を憎み、俺を許さず、俺を恐れるものども。
霽月
安息はなく、しかし死に場所もなく、逃れに逃れて。
霽月
清花に出会った。
霽月
清花。
霽月
ここに至るまでのすべてが、酷く曖昧だ。
霽月
霽月という名を清花に与えられるまで、俺には名はなかった。
霽月
この仮面の下の顔も知らぬ。
霽月
どこより来たのかも。
霽月
しかし。
霽月
今ひとたび、知るべきだ。
霽月
ただ一つの呼吸さえも、木陰から木陰へと移らねば得られなかった、
霽月
あの日々とは違うのだ。
霽月
深く呼吸し、己に入り込む。
霽月
――について調査します。判定は憑依術。
GM
了解です。判定をどうぞ。
霽月
2D6>=5 (判定:憑依術)
ShinobiGami : (2D6>=5) > 8[2,6] > 8 > 成功
GM
霽月と、情報共有で清花に。
GM
ディスコードにてお渡しします。
GM
お渡ししました。
霽月
そうか。
霽月
俺は。
霽月
「清花、聞いてくれるか――」
霽月
霽月は語る。
霽月
その内に秘めたことについて。
霽月
「霽月」
霽月
「俺の名前は、霽月だ」
霽月
語り終えたあと、確かめるように、己の名前を繰り返した。
霽月
今、頭上に高く掲げられたるは白日。
霽月
真実を明かすとき。
GM
GM
ありがとうございました。
GM
改めて……明日は第二サイクルの続きから!
GM
よろしくお願いします!
水面
ありがとうございました!
鴟尾 鴞字郎
ありがとうございました!
境 清花
ありがとうございました
境 仁悟
ありがとうございました~