■メインフェイズ
舞台裏
【フィン】
ちなみにミドルフェイズは導入からどれくらい時間が経過してるものとして扱うのでしょう?
【GM】
OPからクライマックスまでの時間は実時間にして半日〜1日くらいと考えていますが、希望があればもう少し長い時間でも大丈夫ですよ。
具体的な時間経過は決めていないので、1シーンが30分足らずの演出でもいいですし、その逆に1週間くらい山に籠りっぱなしというのも
【フィン】
じゃあ、三日〜一週間くらいは時間が経ってると、フィンヴェナハとしてはありがたいのですが、花冠さんとしてはどうでしょう?
【花冠】
それじゃあ何日間ってのは……まあアレか、ダイスで決めればいいですかね
1d4+3
シーンプレイヤー:フィンヴェナハ
【GM】
シーン形式はドラマか戦闘、どちらにします?
【フィン】
ドラマーで! お話しにいきたいですっ
まだお互いの名前も知らないですし モジモジ
6.昼なお暗い山道。木々の高い梢に遮られ、日の光はわずかな木もれ日しか入って来ない。
【GM】
ではフィンヴェナハさん、あなたが片方の翼を人間にもがれ、不自由な生活を強いられてから早くも一週間が過ぎようとしていました。
その間、あなたは何をしながら、或いは何を考えながら生きていましたか?
【フィン】
初めて受ける重い傷の痛みを耐え、自らの翼を奪った人間の顔を幾度も思い巡らしながら、隠れ処の中で悶々と暮らしていました
ヤツは何者で、己はどうして負けたのか、羽を自分はこれから王者として振舞うことが出来るのか、ヤツの肉を齧ることは適うのか
様々な悩みが浮いては沈み、ごちゃ混ぜになりながらも、流血は止まり再び動けるようにまで回復します という感じなのですが、いかがでしょう?
【GM】
なるほど。では、数日経って血が止まり、痛みもほんの少しマシになったあなたは、数日ぶりに隠れ家の外に出ることにしました
外気に触れたあなたは、かすかに、けれども確かに憎き仇敵の臭いを嗅ぎ取った。
【フィン】
俄かに思い出されるのは、彼の顔と、憎しみと痛みの記憶がない交ぜになった、胸の底が煮えたぎるような感覚
しかし、何故だか今すぐ襲い掛かる気持ちもまたなく
今度は用心深げに、マタギの居る場所へと近付いていきましょう
【GM】
では、臭いを辿り、木々が生い茂る薄暗い山道を這うように進んでゆくと、そこには――。
【花冠】
切り株に腰掛けて刀の手入れをしている。
研ぎ澄まされた雰囲気は微塵も変わることなく。
【花冠】
降ってないですよ。まだ。
刃へ落とされていた視線が、ちろ、とそちらを向く。
【フィン】
では、充分な距離があることを確認しつつ、マタギの方へと顔を出しましょう
【フィン】
「貴様か」
「我を追って、ここまで来たのか? ご苦労なことだ」
【花冠】
「……俺が獲物を追っているなら」
「こんなに晴れていることはないさ」
【フィン】
「なるほど、あの粘りつくような雨粒は貴様が呼んだものか 道理で、人の分際であのように動けるものだ」
「お陰で我はもはや空を飛ぶことも適わぬ 無様な、地を這うトカゲとなったものだ」
【花冠】
淡々と返していっそ素っ気ないくらいだが、じ、とその背に視線をやって。
「……そうか」
慰めも謝罪も挑発もない。
「所詮、人の身だがな」
【フィン】
「そうだ、人の身だ だが、我をここまで蹂躙したのは貴様が初めてだ なぜ、そんなにも強い?」
「貴様を屈服させれば、我が傷も全て癒えるのか? 貴様の肉を食らえば、我はまた天空を舞えるのか?」
【花冠】
「所詮人の身と言ったろう」
「俺を食らおうと、それはただの肉塊だ。何の力も宿りはしない」
【フィン】
「では人よ 貴様の名を聞こう」
「名もなき肉塊に、我が身がにじられたなどと 信じることなど出来るものか」
【花冠】
「………」
意を探るようにフィンの顔を見返してから、
「花冠、と」
そう呼ばれている。そう言って刃を鞘に収めた。
【フィン】
「花冠、か まるで味気もない、平穏の中にあるような名だな」
【フィン】
「ふん、悪くはないさ 花の冠など、我が油断するには相応なものであるからな」
「我が名はフィンヴェナハ 白き角のフィンヴェナハだ 覚えておけ」
【フィン】
では、彼の言葉を その名を引き出した対人術で、花冠の秘密を抜きます
【ダイス】
2D6 = [3,2] = 5 >=5 > 成功
秘密:花冠
手負いの獣が如何に恐ろしい存在となりうるか、あなたは良く知っている。
この一帯のヌシと言っても過言ではない存在であるフィンヴェナハがどうなるか、想像に難くない。
あなたが暮らす小さな山里などひとたまりも無いだろう。
あなたの本当の使命は『山里を守る』ことである。
フィンヴェナハを手負いの獣にしてしまったのは、あなただ。
不始末は自分の手で片付けなければならない。
クライマックスの戦闘でフィンヴェナハに勝利し、フィンヴェナハに止めを刺すことを宣言しなくてはならない。
凄腕の猟師であるあなたは、限定不死の能力を持つ相手に対しても、生命力を0以下にするダメージを与えることが出来る。
『限定不死』とは、主に「退魔編」レギュレーションで登場する妖魔PCが多く備えている能力である。
相手の攻撃で生命力が0になった時、特定の条件を満たしていない場合は、その生命力の喪失を無効化することができる。
今回PC1である花冠は、相手が限定不死の能力を持っていたとしても、それを無視して相手の生命力を0以下にすることができる。
舞台裏
【GM】
尚、クライマックスの戦果で『滅ぼすよー』って宣言すれば滅びます。あっさり
【フィン】
では、こんなタイミングですが、目の前で妖魔化しても良いでしょうか
【GM】
いいですよ。でも大丈夫?このシーン切れたら妖魔化も解除されてしまいますよ
【フィン】
でも自分の手番でしか出来ないですし! やっちゃいます!
器術を穢れで潰します
ここでフィンヴェナハは妖魔化により、妖魔忍法【逢魔時】を習得。
【逢魔時】は自分がシーンプレイヤーであるドラマシーンで使用でき、妨害がなければ生命力を2つ増やすことができる忍法。
妨害のためには使用者がランダムで決めた体術分野の特技での判定を要求され、
判定に失敗した場合、判定者は1点の接近戦ダメージを受ける。
【フィン】
彼の返答を聞き、数分考えるように押し黙り、彼を見つめ続けた
【フィン】
そして、再び口を開きます
「所詮、人の身か… そう言ったな」
【フィン】
「だが、我は竜だ 気高く、そして天上より全てを統べる竜、フィンヴェナハだ」
「人の身には、なれぬな」
【フィン】
「なら、どうすれば良いと思う? 花冠よ」
【フィン】
「簡単なことだ 我が子に、竜の気高さ頑健さと、人の強さを受け継がせれば良いのだ」
【フィン】
「花冠よ、我がものとなれ 貴様の子を、我が生み育て、何者にも負けぬ存在しとしてくれる」
「貴様が齎した苦痛も、痛みも、すべて我が子が飲み込み、食らってくれよう」
【花冠】
「………」
珍しいことに、
呆気に取られた、という形容が最も近い。
【フィン】
「そうでなければ、この翼の傷は、尾の欠損は、身体中に刻まれた傷痕は癒えぬ」
【フィン】
「あらゆるモノすべて飲み込んでこその、竜の気高さよ」
「それは、貴様の肉だけに留まらぬ」
「我が同胞となるのならば、貴様を傍で生かしておいても構わぬ それが子の助けとなろう」
【花冠】
「………」
瞼を伏せ、額に指を寄せて、
「竜に求愛されるなど、考えもしなかったぞ……」
【フィン】
「それは我も同じだ 人の身なんぞに、我が遅れを取ろうなどとはな」
【花冠】
「……貴様は」
「俺が、憎くはないのか」
【フィン】
「憎しみに囚われ、己を失うことこそ我が恐れの根幹よ」
「ならば、その憎しみを食らい、己の糧とすることこそ、我が苦痛を真に遠ざけるのだ」
「我はフィンヴェナハ、天上より全てを見下ろし、支配する白き角の竜なり」
【花冠】
「……全く」
「人の身では、想像もつかぬ事を思いつくものだ」
舞台裏
【GM】
だが生命力が0になれば彼は死ぬのだ……!
【GM】
あ、花冠さんのデータにプライズ『子種』を急遽追加しようかと思います。データとか秘密とかは無しで。
【花冠】
ちょっと待ってwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
【フィン】
では、ここで使命の変更を宣言します
使命を【PC1に復讐する】から、【苦痛を克服する】に
【GM】
はい。ではフィンヴェナハさん、あなたの使命は変更されました。
子種云々はさておいて(何今更
【フィン】
「どうだ、そう遠く無い場所に我のねぐらがあるが… 来るか、花冠よ」
【花冠】
「……宿が変わると眠れない性質でな」
狩人の身でそのようなことがあるはずもない。
【フィン】
「…その程度の虚言、見抜けぬ我だと思うたか?」
【花冠】
「野暮はよせ」軽く両の掌を挙げて。
「恥をかかせるつもりはないんだ」
【フィン】
「まあ、よい 時を改めることとするが……」
では、ここで逢魔時を使用します
フィンヴェナハがランダムで決めた体術特技は《手裏剣術》で、花冠の判定値は7。
確率的に見てそう高い難易度ではない。まあとか言ってるとファンブルするんだけど。
1on1対立型シナリオであることを考慮すると、相手の生命力が増えるのは好ましくないため、
ここは妨害をするのがセオリーではあるのだが……
舞台裏
【花冠】
山里を守るというのとPC2にとどめを刺すのって完全にイコールですか?
【GM】
ニアイコールです。PC2が制御判定に失敗しなければ(尚且つ山里を襲わせないことを約束できれば)山里を守れたものとして扱います。
【花冠】
ああ制御判定あったか……。
つってもここで刃向けるのも野暮かね
【花冠】
……静謐な雰囲気で閉じましょう。表は。
意訳:妨害しません ムシャれ
【フィン】
では、ざわめきと共に竜の体躯が盛り上がり、その身に活力が満ちていくのが、目に見えて分かります
「力づくでも、貴様は頂くぞ 必ずな」
【フィン】
そういうと踵を返し、再び山中へと消えていきます
シーンプレイヤー:花冠
【GM】
さて花冠さん、シーン形式はどうしますか?
9.小さな沢には澄んだ水が流れている。手を浸せば、水は刺すように冷たい。
【GM】
澄んだ水が流れている小さな沢。山の鳥や獣たちが水場としても使っているのでしょう
【花冠】
山里の方に行っていいですかねー 手酌でいいので村人とか出したい
【花冠】
あ、ありがとうございます こどもがいいです(要望)
水汲みとか多分そんなノリ。
【GM】
では、山里にほど近い小さな沢。清冽な水が湧き出るこの場所は、村人たちが水場として使うこともある。
森の方から水桶を重そうに担いだ子供がおぼつかない足取りで歩いて来ますね
【花冠】
汚れた上衣を洗って絞って水気を払って、というところでその姿を認めて。
【GM】
子供は、あなたを見て声を掛けますね
子供「あ、にーちゃん!」
普段は里から少し離れた場所にある学校に通っている小学生くらいの子。
週末だから、寮から戻って来たのかな。そんな感じ。
【花冠】
「手伝いか? お疲れ様」なるほどなるほど。
【GM】
子供「じーちゃんがさー、茶を沸かすのは沢の水じゃなきゃならん!ってうるさくってさー!」
【花冠】
「この沢の水は綺麗だからな。拘るのも無理はない」くすり笑んでから、
「……久しぶりだな」肩に上衣を引っ掛ける。
【GM】
子供「うん!休みになったから帰って来たんだー!」
【花冠】
「そうか。親御さんも喜んでいるだろう」
軽く頭を撫でてやる。
【GM】
子供「へへー、うち、じーちゃんひとりだしさー」
この子の親は小さいころに亡くなったという。
この子自身、父の顔も母の顔も知らない。
【GM】
子供「そーかなー?ねーねー、今日は何獲れた?
この前くれたイノシシの肉、味噌漬けにしたらすんごい旨かったぜー!」
【花冠】
それはよかった、と表情を緩めるけれど、
「すまない。……最近は、山が騒がしくてな」森を振り仰ぐ。
「動物たちが騒いでいる。少し、狩りは休んでいるんだ」
【GM】
子供「えっと……何かあったの?」
不安げな表情を浮かべる
【花冠】
「大したことはないさ」
安心させるようにぽんぽんと。
【GM】
子供「そうなんだ……ええとね、山には怖い怪物がいるってじいちゃんが言ってたんだ。……にいちゃんも、気をつけてな」
【花冠】
「……ああ。大丈夫」
「嵐が訪れない地はないんだ」
「……同じように、嵐が去らない地もないから」
だから、大丈夫だと繰り返す。
【GM】
子供「嵐……そっか」
子供「にいちゃんなら大丈夫だよね。……きっと!」
【花冠】
「きっとを付けるなよ」少しばかり苦笑して。「大丈夫だ」
「ほら、お祖父さんが待ちくたびれているよ。早く水を届けてやれ」
ぽんと背中を叩いて見送る。
【GM】
子供「うん!じゃーな、またなー!」
そう言って、子供は去って行きます。
【花冠】
「――怪物、か」
再び森を振り仰ぐ。
「いっそ、”怪物”のままいてくれるのなら、気は楽だったんだが――」
視力を失った赤い瞳を異形のそれと。
森の中、その真実を見通しておきましょう。
【ダイス】
2D6 = [5,3] = 8 >=5 > 成功
秘密:フィンヴェナハ
超自然的な存在に近いあなたは、強大な力を持っている。
以下の能力を得る。
【魔人】の背景を取得する。
【限定不死】:妖魔化している間、あなたは生命力が1以下になることがない。
現在、あなたの身体には花冠によって付けられた傷痕が残っている。
傷痕が痛みをもたらす度に、あなたは人間如きに傷を付けられた屈辱を思い返す。
皮肉にも、それはあなたの力を更に高めている。
あなたはプライズ『傷痕』を得る。
あなたが望むのなら、使命を『苦痛を克服する』に変更しても良い。
あなたが自らの手で『傷痕』の痛みを克服するには、あなたが花冠に勝利するしかない。
クライマックスフェイズ終了時に花冠を倒し、なおかつ戦果として『苦痛の克服』を宣言した場合に限り、プライズの破棄を宣言することが出来る。
その後、制御判定に成功すれば、プライズ『傷痕』は意味を持たないものとなる。
舞台裏
【花冠】
了解です。……克服されれば子種は取られずに いや……(
戦果で子種取られなければ大丈夫なんですよね #何の確認だコレ
【GM】
あ、今回は変則的ですが『苦痛の克服』に『子種を奪い取る(婉曲)』という選択肢を追加しました
【GM】
さて、まだ知らない秘密が一つありますが……どうします?
【花冠】
傷痕ってドラマシーンで譲渡可能なんです?
【GM】
譲渡できないです。条件あります
とりあえず秘密見たら何か分かるかも。それ以上は言えない。
秘密渡すのはこのシーンでも、或いは判定できないマスターシーンを1個用意しても
【花冠】
ふむ。フィンは見せてって言ったら見せてくれます?
【フィン】
未来の旦那になら見せても悪いものではあるまい
秘密:プライズ『傷痕』
《形状》
所持者の身体に刻まれた生々しい傷痕(切り傷や銃創など任意)
《効果》
プライズの所有者が【魔人】の背景を持っている場合、クライマックスフェイズ開始時、即座に1回の妖魔化を行う。
クライマックスフェイズ終了時、このプライズの所持者が妖魔化している場合には、制御判定は自動失敗する。
このプライズは解除条件を満たさない限り譲渡や破棄は出来ないものとする。
《特殊》
このプライズの秘密は情報共有が発生しない。
プライズの保持者は、好きな時にこのプライズの秘密を誰かに渡しても良い。
舞台裏
【フィン】
Oh Yes
要するに、克服できないと妖魔化ENDですかな
【フィン】
まだクライマックスには入らないですよね?
【GM】
シーン切り替えてマスターシーン用意します?
村にドラゴンが来たら大騒ぎですし
【花冠】
大騒ぎですね。
シーン増設していただけるとありがたいかなー。
こちらから赴きましょう。
【フィン】
先ほど花冠さんが居た場所あたりなら分かるかな?
【GM】
では、先ほどの巣穴の傍まで花冠さんは向かったということで
マスターシーン
【GM】
では日もすっかり落ちて、真っ暗な夜の山。
けれども、忍であるあなた方には、夜の闇など足を妨げる要因にはならないだろう。
【花冠】
隻眼で夜闇を見通して、そうして決して大声でなく。
「……気付いているのだろう。フィンヴェナハ」
相も変わらず泰然とそこに立つ。
【フィン】
「貴様か……」
のそりと、木の葉や茂みを揺らしながら、竜が巨体を表します
「こんな夜半に来るとはな 貴様には睡眠も要らぬと見える」
【花冠】
「まさか」
眠るべきときには眠っているさ、と軽く言い捨てた。
「傷は痛むか?」
【フィン】
「痛みはあるが、これしき身体を動かすには支障もない 翼なき体躯の動きにも慣れたものだ」
【花冠】
「そうか」
そう返すと切り株に腰掛けて。
【フィン】
「して、何用だ?」
先日の遭遇時とは異なり、こちらものそりと這い出てきて、花冠の腰掛ける木株のそばへと座り込みます
【花冠】
「いや――大した用事ではない。ただ」
死ぬ前に、とは言わない。
「つまらない昔語に無聊を慰めたくなっただけだ」
【フィン】
「ふん、昔話だと? 幾年も生きてなさそうな貴様がか?」
【花冠】
「俺にとっては昔の話さ」
「……村人に語り聞かす内容ではないからな。他に相手がいない」
軽く笑みを漏らした。
【フィン】
「よい、どうせ我も退屈していたところだ」
どっかりと、花冠を覆うように座り込みながら 「話してみろ」
【花冠】
「……この近くに山里がある。貴様は知っているか」
【花冠】
「そうだ。……俺は、あそこの生まれでな」
【フィン】
「一度だけ、翼をはためかせ姿を見せたことがあったか、実につまらぬ村であったな」
「我を一目みただけで、村人全員が屋内に閉じこもり、うめき声すら立てぬ」
【花冠】
「そんなこともあったのか。……俺がいた頃だったかな、それは。記憶にはないが」
【フィン】
「まさか貴様のような者が、あのような村から生まれたとは、あまり面白いことではないな」
【花冠】
「相変わらず買い被られているようだな、俺は」
そんなにか、と首を竦めて。
【フィン】
「貴様のつけたこの傷痕が、我に諭すのだ」
「それで、貴様があの村の生まれだから、どうしたというのだ?」
【花冠】
「昔語と言っただろう。そう結論を焦るな」
「俺は、あの村で生まれはしたが――育ちは違ってな」
「攫われたんだ、妖魔に。その下で育った」
【花冠】
「何が気に入られたとは知らんがな」
「この瞳も、」指先を左目の瞼に添えて
【花冠】
「……それに奪われた。二度光を映すことはないだろうな」
【花冠】
「それが――百年も前の、話になったか」
「お前にとっては、ひと瞬きか?」
【花冠】
「ああ。片目を奪われ、癒えぬ傷痕を身に剞まれた」
「そうして今は、老いでは死ぬことのない身体だ」
【フィン】
「竜は歳月など数えぬ、全てをまたいで生きるのだから
だが、それでも凡弱な人の身が百年の時を共とするのは驚かざるを得んな」
【花冠】
「はは。この程度で貴様を驚かせられるとは思わなかった」
軽く笑って、
【フィン】
「だが、不死か だがそれがどうした? 我もそうだ 決して死なぬ」
【花冠】
「結論が早いよ、竜」
「老いでは死なずとも不死ではないんだ」
「……むしろ呪いに蝕まれたこの身体は、ひとよりも容易くその生命を落とす」
【フィン】
「…それは困るな 貴様には、未だ我が子を貰っておらんでな」
【花冠】
「その話だが」
じ、とフィンを見上げて
「このような傷物であっても、貴様は俺を望むのか?」
【フィン】
「貴様が何を懸念するか、我には分からぬが」
一呼吸おいて
「貴様は片眼でありながら、貴様の動きはいずれも的確で無駄のないものであった」
「それに」
「それだけではない 悠久を生きる我を正面から撃ち落し、地に這う存在としたその強さは」
「それは、竜の身であっては、分からぬものだ」
「だからこそ、貴様を望むのだ 強き人の身を。我が血脈に宿すのだ」
【花冠】
「そうか。……だが」
「俺はお前を撃ち落とすよ」
「その上で、俺を受け入れるというのならば受け入れろ」
【フィン】
「何を言うか」
「貴様を我を既に蹴落としたではないか」
「その上、どこに堕ち込む場所が在ろうかと、言っておるのだ」
【花冠】
「……そうか」
では、と。
「これ以上の問答は無用だな」
【フィン】
「よかろう その上で、我がお前を打ち倒せば」
「我は貴様を巣穴へと引きずりこんでくれよう、花冠よ」
【花冠】
「はは。……その時に」
俺が生きていればの話だな、と、そう声を落として背を向けた。
【フィン】
「死ぬことは許さぬぞ 貴様の肉から血の全てにいたるまで、我のものとなるのだからな」
【花冠】
それに応えて一度だけ掌を振って、闇夜へと姿を消していく。
【フィン】
では、その背中を見送り、その残り香にしばらく佇みながら、こちらも巣穴へと引き返しましょう。