-DAY7-


 潮風には慣れてきた。
 木組みの足場の上に座り込み、ディドは手の中で石を弄んでいる。
 クリスマス、という耳慣れない行事に参加したことに特に理由はない。
 郷里で祀られていた神のことをディドはもはや信じていなかったが、別の神に鞍替えするつもりもなかった。

 ただ、このクリスマスとは祭事ではあるものの、信教の産物であるかと言えば微妙なものにも思える。見知らぬ誰かに贈り物を渡し、代わりに誰かが贈ったものが自分の手に渡る。どのようなものを、どれほどの価値のあるもの贈るかは、贈るものに委ねられている。奇妙な風習のようにも思えたが、人との関わりを生み出すための工夫なのかも知れない。

 石は、音聴石という名だという。先程から潮風に紛れて、煩わしくない程度に静かに旋律が聞こえてくる。
 穏やかな音はしかし、ディドにとっては馴染みのない色合いだ。どのような楽器を使って奏でられているのかも判別がつかず、音階さえ微妙に異なる気がした。心を落ち着かせる、子守歌のような、少なくとも耳障りではない音。
 不意に眉根を寄せて、ディドは石を握り締めた。
 音は止み、ただ風と波の音だけが辺りに満ちる。