44.ひとであれば

『――一緒に帰るんじゃないの?』



 ――想起。
 目指す処。

 帰るべき場所。焦がれる先。

 求め続けている。



 その貌を忘れていく。






 手放したものを見失い、
 掴んだものを握り潰し、
 その果てに誰の姿を見るのかも、

 最早。







 瞼の裏に刻み込まれた鮮烈な朱が、
 絶望に膝を折った身体の中でけたけたと笑い声を響かせる。

 遂げられなかった遺志を当たり前だと嘲笑う。
 さよならもあいしてもごめんなさいも、伝えられる時は限られていた。
 それを知らずに人は生きる。

 それを知らずとも人は生きる。



 人でさえあれば。

 人でさえあれば。人でさえあれば。人でさえあれば。

 無様な化生の夢見言は償いにも慰めにもならず、
 当然弔詞は届かない。
 失われた命も戻らない。



 微睡みが震える。
 やさしい揺り籠に別れを告げて、
 終幕への帳を下ろすことを、受け入れねばならなくなる日が来る。

 せめてと甘やかな安寧を引き伸ばす、
 その代償の徴を、どのような形で刻まれることとなるだろう。